奈良県)取り壊し予定の奈良・旧都跡村役場 市文化財課「貴重」と認識
奈良市が地域の集会施設への建て替えのため取り壊しを予定している旧都跡村役場(同市四条大路5丁目)の価値について、市の文化財行政の担当部署である市教育委員会文化財課はどう認識しているのか26日、聞いた。同課は文化財として「貴重」とした。
登録有形文化財の候補
県教育委員会が2011年3月にまとめた調査報告書「奈良県の近代和風建築」は旧都跡村役場について、「最小規模の庁舎と議事堂が、ほぼ当初のままセットで残っている点で、貴重な存在」 と評価した。市文化財課は同建物の価値について報告書にある通りとし、「郷土の歴史を伝えるものとしての価値もある」とした。
生駒市では同じ1933年に建てられた近代和風建築の生駒町役場が2010年、国の登録有形文化財に登録された。旧都跡村役場についても、国の登録有形文化財の候補になり得る価値があるのではないか。同課は「県教委の調査報告書に掲載されたこと自体がそうした価値があることを示しているといって差し支えない」とした。
当初の奈良市域が確定した1957年までに、奈良市と合併した町村の役場で現存しているのは、同課によると、1933年建築の旧都跡村役場と1953年建築の旧伏見町役場だけとみられる。旧伏見町役場は私立西大寺保育園の園舎になっている。旧都跡村役場は4月まで、市連絡所と公民館施設として使われていた。
旧都跡村役場が今日まで残ったのは、良い具合に役所の中で機能が割り当てられた▽用途を満たすだけの広さがあった▽建物は今では傷んでいるがこれまでは使えてきた―ことなどが理由として挙げられるという。
1977年に撮影された建物の写真がこのほど、市文化財課に保管されている市史編纂(さん)室の資料の中から見つかった。撮影は建築から40年余りたっているが、同課は写っている建物の状況から建築当初のままであろうという。
現在の建物は写真と比較すると、玄関の車寄せに壁が設けられている▽窓が木製からアルミ製に取り替えられている▽庁舎と議事堂をつなぐ渡り廊下が瓦屋根から鉄骨製に変わっている―ことなどを確認できるが、外観全体としては建築当初とほとんど変わっていないと言えるという。
旧都跡村役場の取り壊しに対しては、日本建築家協会近畿支部奈良地域会が保存を求める要望書を仲川元庸市長あてに提出している。