奈良県)取り壊し予定の奈良市・旧都跡村役場、保存求める建築家協会地域会が見学
近代和風建築として貴重とされる奈良市四条大路5丁目の旧都跡村役場を、市が地域の集会施設への建て替えのため取り壊そうとしている問題で、保存を求めている日本建築家協会近畿支部奈良地域会(森田昌司会長)が30日、市の立ち会いの下、同建物を見学した。
旧都跡村役場は1933年の建築で、いずれも木造平屋建ての庁舎と議事堂から成る。県教育委員会が2011年3月にまとめた調査報告書「奈良県の近代和風建築」は「最小規模の庁舎と議事堂が、ほぼ当初のままセットで残っている点で、貴重な存在」と評価、歴史遺産、文化財としての価値を認めた。しかし、市連絡所や公民館施設として使われていたことから、地元の都跡地区自治連合会は老朽化や使い勝手の問題を理由に、地域ふれあい会館への建て替えを要望。市は8月に建物の取り壊しに着手し、11月に着工する予定にしている。
見学には森田会長ら7人が参加。建物の外部や内部の保存状態や傷みの程度を見て回った。旧議事堂では、当初の天井が残っていることなどを確かめた。同地域会の上嶋晴久さんは軒裏の組み物に注目、「奈良の文化財以外の建物で、寺と同じようなこうしたきっちりとした構造を見せるものはない」と感心した。保存には「住民がこれを残したいという意思を示すことが大事」と話した。
また、好川忠延さんは「十分に使える建物なのに、同じような規模の建物を建てようとしている。外壁の板は傷みも目立たず、土壁の崩れもない。曳(ひ)き家工事や耐震工事も市が考えているような費用は掛からない。市としてはまず建物を残すところから考えなくては」とした。森田会長は「計画されている建て替えの費用程度の建物は、30~40年もすればまた建て替えが必要になる。旧都跡村役場を保存すれば、30~40年後にはどれだけ素晴らしい文化財になっているか」と話した。
建て替え工事の競争入札、6月2日に告示
地域ふれあい会館新設工事の一般競争入札は6月2日に告示される予定。総合評価落札方式で行われるという。