2014年8月8日 浅野善一

奈良県)生活保護の通院交通費支給、しおりへの記載徹底されず

 生活保護を受けている人が通院する際の交通費が支給の対象であることを、「生活保護のしおり」などの配布文書で周知している県内の福祉事務所は、15事務所のうちの4事務所にとどまっていることが「奈良の声」の調べで分かった。厚生労働省は2010年、通院交通費の原則支給を明確にし、都道府県などに通知した際、文書による周知の徹底を求めている。

厚労省要請、県内4分の1の福祉事務所が未実施

 通院交通費をめぐっては07年、北海道滝川市で被害額が2億円に上る不正受給事件が発覚した。交通費の支給基準はそれまで、生活保護法の医療扶助基準に「移送に必要な最小限度の額」としか規定されていなかった。厚労省は事件を受け、基準を「明確化」するとして、医療扶助運営要領を改正、08年4月、都道府県などに通知した。

 ところが、改正では、支給の範囲を、災害現場や離島からの移送▽移動困難な患者の移送▽へき地で交通費が高額になる場合▽身体障害で電車やバスを利用できない場合―などに限ったため、批判が出た。厚労省は再度、要領を改正、「へき地」や「高額」の条件をなくすなどし、10年3月、都道府県などに通知した。併せて、通院交通費が支給の対象であることを、生活保護のしおりなどの文書で受給者に周知するよう求めた。

 記者は7月28日から8月6日にかけて、県内の15福祉事務所に対し、しおりへの記載の有無などを電話で問い合わせた。

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