地域の身近な問題を掘り下げて取材しています
拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

三条通り拡幅 「やすらぎの道」以東 見通し立たず

市「完成区間の効果見て判断」 財政の厳しさ逆風

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2011年12月26日
拡幅されていない三条通り。猿沢池付近から西方を望む=奈良市 拡幅された三条通り。「やすらぎの道」手前から東方を望む

 奈良市中心市街地の目抜き通り、三条通りで市が進めている道路拡幅計画は、JR奈良駅前から「やすらぎの道」までの区間が完成に近づきつつある一方で、残る春日大社一の鳥居までの区間の見通しが立っていない。市の財政状況の厳しさが逆風になっている。2010年度の市の事業仕分けでは、市民判定員の判定を受けて「不要」とされた。市は完成区間の効果を見て判断するなどとして、実施するかどうかを明確にしていない。
 道路の拡幅が計画されているのは、JR奈良駅前から一の鳥居までの1260メートル。おおむね8メートルの道幅を倍の16メートルに広げる。区間の大半を一車線、一方通行とし、歩道を広く取るのが特徴。春日大社への参道でもある同通りを、「奈良のシンボルロード」にふさわしい姿に整備し、にぎわいを高めようという。
 現在、JR奈良駅前から「やすらぎの道」までの482メートルで、工事が進められており、市街路課によると、遅くとも2013年度には完成する見通し。
 これに伴い、「やすらぎの道」の前後は対象的な風景になった。工事がおおむね完了した西側はビルが多いせいもあり、広い道路が都心の通りといった印象を与える。対して拡幅されていない東側は、生活感のある商店街通りといった雰囲気だ。
 同通りの拡幅が都市計画決定(あらかじめ計画区域の建築制限などができる)されたのは古く、昭和初めの1933年。当時は国道24号だった。その後、県道を経て、73年に市道になった。
 計画が具体化に向けて動き出したのは、決定から60年余り後の96年。通りの6自治会が商店街の活性化を目指して、市に計画の実施を要望した。翌97年、道路拡幅への地権者らの同意を受けて「三条通地区地区計画」が決定された。JR奈良駅前から「やすらぎの道」までの区間が、県の事業認可を経て、2009年、着工に至った。
 同課によると、現着工区間の用地買収費や工費を合わせた事業費は、63億円が見込まれている。うち55%は国の交付金で賄われる。
 一方、「やすらぎの道」から一の鳥居までの778メートルは、着工に必要な事業認可にも至っていない。着手した場合の事業費は算定されていないが、現着工区間の事業費をもとに単純に距離を比例させて計算すると「75億円」(同課)という。
 市は残る区間の着手に慎重な姿勢だ。実施の有無については、未着手になっている市内の都市計画道路全体の見直しの中で方向性を見極めるとともに、完成区間で効果を検証し、財政状況も勘案した上で判断する、としている。市の財政は近年、歳入の伸び悩みを受けて余裕がなく、道路建設などに充てる投資的経費は抑制されている。仲川元庸市長はこの12月定例市議会で、「拡幅しなければ活性化できないということではない。優先順位があり、限られた財源でどう活性化を図るかが必要」と答弁した。
 2010年度の事業仕分けでの市民判定員の見立ては、もっと厳しかった。市は、歩行者の安全確保や自転車の迷惑駐輪対策なども説明したが、残る区間については、30人の判定員のうち22人が「不要」を選択、仕分け結果も「不要」となった。市民判定員の意見には「『やすらぎの道』から一の鳥居の区間は、今のままの方が奈良らしい雰囲気」「費用が膨大で市民感情として納得いかない」などがあった。市は結果を受けた改善の方向性について、「都市計画道路全体の見直しの中で検討していく」としている。
 地区計画の主体となる三条通りまちづくり協議会は、全区間のうち、商店街の街並みが続くJR奈良駅前から猿沢池手前までの880メートルの拡幅整備を念頭に置いており、同地区計画はこの区間の建築や建物の意匠、看板を制限している。「やすらぎの道」を越えて猿沢池までを一体として、拡幅を実現させたい考えだ。
 同協議会の会長・末広隆さん(80)は「中心となる行政が、今は厳しいと言えば、時期を待たなければならない」としながらも、「猿沢池までを同じものにしなければ」と事業の継続を訴える。
 工事が進むJR奈良駅前から「やすらぎの道」までの区間の整備方針は、同協議会企画委員会が中心になって考えている。計画では、歩道への車の進入を防ぐ車止めを灯籠風の可動式にするなど、知恵を絞っている。路上に駐輪場も設ける計画だ。委員長の今西康宏さん(53)は「ほぼ概要ができた。2年間かけて練った。完成すればいいものになる。可動式の車止めは全国初」と胸を張る。
 三条通りは、9月の采女祭りや12月の春日若宮おん祭などの行列のコース。近鉄奈良駅周辺の8商店街でつくる市中心市街地活性化研究会の会長・松森重博さんは、奈良の伝統文化を守る道だとして、拡幅整備の必要性を訴える。「財政が先走っているが、それだけで結論を出してはいけない。奈良市は工場をつくれない。市民のためだけでなく、全国の人のためにも伝統文化を守らなければならない。それで成り立っているまち。インフラを進めて伝統行事にふさわしい道にすることが将来の財政につながる」。
 松森さんは事業仕分けにも不満だ。「不要と判定されたことだけがぽつんと報道され、商店街や市民の間では拡幅が中止になったように誤解されている。事業仕分けは結論ありきで、地元との接点なしで結論を出している気がしてならない。議論はしたらいいが、市はもっと情報を提供してもらいたい」と注文する。
 ただ、未着手区間の商店街には次のような声もあった。「下(「やすらぎの道」以西)は拡幅されて変わってしまった。上(同以東)に来てほっとした、というお客さんの声を聞くこともある」。また、「やすらぎの道」より東側の区間は、通りの北側に面している店舗の背後が上りの斜面になっているため、建て替え費用が通常以上にかかり、その分も補償してもらう必要があるとする指摘もあった。
 市が未着手区間の方向性を見極める判断材料の一つとしている、都市計画道路見直しの素案は、本年度中にまとめられる。(浅野善一)
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