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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

投入額77億、1位の神戸市に次ぐ規模

奈良県市町村総合事務組合の仕組債

メール
2012年7月27日 浅野善一
地方公共団体の仕組債または指定金銭信託
への投入額
地方公共団体名 09年5月
(億円)
現在
(億円)
減少
理由
神戸市 165 165
奈良県市町村
総合事務組合
77 7 売却、
償還
兵庫県朝来市 67.5 61.5 償還
兵庫県豊岡市 35 35
福岡県飯塚市 25 20 償還
大阪府箕面市 22 22
福岡県苅田町 17 17
兵庫県加古川市 13 13
兵庫県芦屋市 12 12
兵庫県三木市 11.98 9.98 償還
兵庫県加東市 9.3 9.3
岡山県早島町 8.5 8.5
福岡県芦屋町 6 6
兵庫県三田市 5 5
広島県庄原市 5 0 償還
明日香村 5 5
福岡県鞍手町 5 2 償還
岡山県里庄町 3.5 3.5
兵庫県たつの市 3 3
兵庫県佐用町 3 3
兵庫県洲本市 2 2
兵庫県多可町 2 2
福岡県矢部村
(現在は八女市
に編入)
2 2
山形県酒田市 1 1
静岡県川根本町 1 1
09年5月末の総務省調査結果をもとに各団体
に電話で現在の状況を確認した

 奈良県市町村総合事務組合が保有していた仕組債を満期前に売却し、元本割れにより多額の損失が発生した問題で、同組合の仕組債への投入額77億円が、全国の自治体で同種の金融商品への投入額が1位の神戸市の165億円に次ぐ規模だったことが分かった。「奈良の声」が、総務省が2009年に自治体を対象に実施した調査の結果と比較した。

実損、初の可能性も

 また、各自治体に現在の運用状況を確認したところ、売却や解約をした例はなく、同組合のように売却により実損が顕在化するのは、一部事務組合を含め地方公共団体では初めてとなる可能性もある。

 同組合の仕組債への投入額の内訳は退職手当基金が68億円、市町村会館管理基金が9億円。このうち退職手当基金は取り崩しが必要になり、2010、11年度に63億円分を手放した。一部は元本が戻ってくる早期償還だったが、大半は売却となり、元本割れにより20億円が消失した。会館管理基金は7億円が早期償還となった。

 さらに、別団体にはなるが、組合が事務局業務を行っている県市町村振興協会も基金で約11億円を投入していた。これを加えると、組合関連の投入額は合わせて88億円に上った。

 総務省の調査は09年5月末に実施された。仕組債またはこれと似た構造を持つ指定金銭信託の導入状況を調べた。24市町村が総額約430億円を投入していたことが分かった。1位の神戸市は指定金銭信託を導入していた。

 2位は兵庫県朝来市で67億5000万円を仕組債と指定金銭信託に投入していた。市総務課によると、最大時は82億9200万円に上った。市は評価損に対し、先月25日、販売した金融機関を相手取り損害賠償を求める裁判を起こしている。

 電話取材に応じた各自治体によると、多くが財政調整基金、地域振興基金、減債基金などで導入していた。

 本県では明日香村が5億円を仕組債に投入していた。

 仕組債や指定金銭信託をめぐっては評価損や利息のつかない塩漬け状態が問題になっている。各自治体の現在の運用状況については、早期償還により投入額が減少するかゼロになる自治体はあったが、損失が発生する売却や解約をした自治体はなかった。

 総務省によると、県市町村総合委事務組合のような特別地方公共団体と呼ばれる一部事務組合を対象にした同様の調査はないという。

 仕組債や指定金銭信託は高い金利が期待できるとされるが、為替などの相場に左右される上、満期が30年などと長いため、最近のように円高が続くと、金利がゼロか極めて低い数値のまま塩漬け状態になってしまう。また、仕組債は市場性が低く、満期前に売却すると大きく元本割れする恐れがある。

 (山形県酒田市の現在の運用状況については7月30日に確認ができたため、同日、「未確認」から「1億円」に改めた)

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