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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

〈視点〉奈良県大和郡山市 土地開発公社問題、説明責任果たしているか

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2013年3月12日 浅野詠子

 全国的に見て奈良県は、土地開発公社の経営が著しく悪化した市町村が多い。中でも、市税などの収入に比較的恵まれていながら、過去の市政から引き継いだ遊休地の重い財政負担が将来に影響する点で、奈良市と大和郡山市には共通する課題がいくつかある。「奈良の声」はこれまで、県都の奈良市の事例を中心に、公社という目の届きにくい外郭団体が市財政を悪化させている状況を報じてきたが、大和郡山市が新年度予算において、公社の解散に向けた第三セクター改革推進債の49億5000万円の借り入れを計上したことから、気が付いたことを述べてみる。

 記者は2009年4月、大和郡山市内の市民団体が主催する土地開発公社問題の集会で講演をしたが、質疑応答の時間に、元市議であるという実名を名乗る人が手を上げ、約20年前の現職のころの状況に触れた。元市議は、100人近い参加者を前に「取得した目的が全く不明な土地がいくつかある」と訴えた。そうした土地が今、いわゆる「塩漬け土地」の一角を占めて、市の財政に重くのしかかっているのだと、無念の表情で話した。

 元市議によると、当時は情報公開が非常に乏しく、外郭団体の土地開発公社が何をしているのかは、小会派の議員にとっては雲をつかむようなものだったらしい。何とか核心をつかみたいと、債務負担行為の数字をもとに、行政担当者らに土地購入の経緯を聴取してきたという。その過程で、おかしな土地がいくつか浮上し、議場でも追及したが、「議会の多数派が不問にし、債務負担行為の数字はあっけなく議決されてしまった」とこぼした。

 その09年という年は、地方財政法が改正され、塩漬け土地で財政が悪化した全国の自治体が特例的な借金をして公社を解散できるようになった。いわゆる損切りである。それが前述した第三セクター改革推進債で、担当の職員らは「三セク債」と呼んでいる。

 大和郡山市は13年度中に総務大臣の同意と県知事の許可を得て前述の金額を借り入れる。それを踏まえ、昨年5月、市土地開発公社経営検討委員会(委員長、伊藤忠通・県立大学長)が最終報告書をまとめたが、くだんの元市議の問題提起に応えるような内容ではなかった。

 報告書は取得した土地が塩漬けとなっている11事業に対し、担当課の職員に聞き取り調査をしたが、塩漬けになった理由について漠然と経済情勢を挙げるなど、あいまいな回答が多かったといえる。聞き取りの結果を踏まえて報告書は「計画の甘さ」を指摘するが、具体的でない。

 一例を挙げれば、福祉施設の建設を掲げて1987年、同市矢田町で公社が買収した山林など約7000平方メートルの簿価は約4億4800万円。これは取得価格と長期借入金の利子を合わせた額であるが、時価はその100分の1以下の300万円ほどにすぎない。しかも同所は市街化調整区域であり、また道路にも隣接していない。

 かつて100億円を超える塩漬け土地を保有していた大和郡山市土地開発公社は、どの市長の時代に、どんな目的で、誰から、いくらの金額で買収したのかを個々に検証しない限り、実態はつかめないだろう。

 奈良市の土地開発公社経営検討委員会(委員長、出水順弁護士)が2011年3月にまとめた最終報告書には、具体的な5つの事業について調査し、「議員や団体などを介して市への圧力がかかった」「明らかに高額に設定された買収価格」「元市長・元助役による外部圧力の容認」などの疑義を明記した。土地開発公社の問題は、単に地価の下落が招いたものではなかった。政治災害のような側面は決して否定できない。

 現に生駒市では、前市長(故人)と元議長が共謀、土地開発公社を悪用して不要な土地を買収し、背任・贈収賄事件に発展、元議長の実刑が昨年10月、確定した。大和郡山市の塩漬け土地問題に詳しい同市議は言う。「奈良市の報告書と読み比べてみると、大和郡山市の報告書はどうも物足りない。過去を不問にしているような気がしてくる」と。

 ただ、大和郡山市議会は土地開発公社の問題で特別委員会を設置している。一方、奈良市議会は残念ながら後ろ向きである。奈良市の三セク債発行額は173億円と非常に大きい。あえて両市の共通点を上げるとすれば、市民に財政被害の実態が十分伝わっていないことではないだろうか。

 県内では平群町の土地開発公社も三セク債の借り入れを行い、今月中に天理市と香芝市の土地開発公社、奈良市の駐車場公社が新たに県に同債の許可を受ける。いずれの自治体においても、情報公開と説明責任の試金石になる問題だ。

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