2014年2月7日 浅野善一

奈良県:奈良市、昭和初期の旧都跡村役場取り壊しへ 近代和風、文化財的価値の議論なく

奈良市が取り壊しを決めた旧都跡村役場。右が公民館分館として使われている庁舎、左が連絡所として使われている議事堂=2014年2月5日、同市四条大路5丁目

 奈良市は7日までに、昭和初期に建てられ、近代和風建築として貴重とされる奈良市四条大路5丁目の旧都跡村役場を取り壊すことを決めた。建物は市の連絡所や公民館分館として使われていることから、地元自治連合会が老朽化やそれに伴う危険性などを理由に、地域ふれあい会館への建て替えを要望していた。文化財的価値に着目した議論には至らなかった。

 生駒郡都跡村は1889(明治22)年の市町村制施行で誕生。1940(昭和15)年、奈良市に編入された。役場建物は1933(昭和8)年に建てられたもので、築80年になる。庁舎と議事堂のいずれも木造平屋建ての2棟から成る。庁舎は入り母屋造りの桟瓦ぶきで広さ約216平方メートル。議事堂は寄せ棟造りの桟瓦ぶきで広さ約130平方メートル。

 近代和風建築は、明治維新から太平洋戦争終了までに建てられた近代的特徴を持つ和風建築物をいう。文化庁の全国調査を受けて、県教育委員会は2011年3月に調査報告書をまとめ、「奈良県の近代和風建築」として91件を選出したが、旧都跡村役場はこのうちの一つ。「最小規模の庁舎と議事堂が、ほぼ当初のままセットで残っている点で、貴重な存在」とされた。

 建物は現在、庁舎が都跡公民館尼辻分館として、議事堂が市都跡連絡所として使われている。都跡地区自治連合会は2012年3月、市議会に請願書を提出。「市の職員が勤務し、住民が多く訪れる施設であり、大きな地震が起きた場合の安全性が心配」とし、地域ふれあい会館への建て替えを求めた。

 市はこのほど、同連絡所と分館をことし4月以降閉鎖する旨の案内文書を関係住民に配布した。理由について、建物が昭和初期の建築で耐震化が施されていないうえ、老朽化も著しく、大変危険であるとした。

 市地域活動推進課は、地元から建物の保存を求める声はなかったとした。県教委の報告書に取り上げられたことは知らないとし、市教委文化財課への文化財的価値についての問い合わせなどもしていないとした。同課によると、建物は床が抜けたりして毎年、修繕が必要なほか、いつ倒壊するか分からない状態で、維持が大変という。建物を維持していく財政的余裕はないとした。建物の取り壊しはことし夏の予定という。

 尼辻分館で住民を対象にダンス教室を開いている市内の吉田吏さん(77)は「木造のいい建物。相当、年数がたっているのに丈夫。使わせてもらい感謝している」と話した。分館の床はサクラの木が使ってあってダンスに合うといい、「もったいない」と残念がった。 

 建設する地域ふれあい会館は軽量鉄骨造り平屋建てで、広さ280平方メートル。11月に着工し、来年4月の完成を目指す。事業費を市の新年度予算案に計上する予定。地域ふれあい会館は地域住民の活動拠点という位置付けで、市内の小学校区ごとに配置、これまでに14施設がつくられた。

 連絡所の機能は会館完成後も再開されず、廃止の方向という。尼辻分館も廃止される。

生駒では市審議会が保存意見、郷土資料展示施設に

 一方、生駒市は、旧都跡村役場と同じ1933年に建てられた同市山崎町の旧生駒町役場を保存し、今月1日、郷土資料の展示施設、生駒ふるさとミュージアムとして開館させた。

 建物は木造平屋建て広さ538平方メートル。市教委生涯学習課によると、同施設開館前は公民館として利用されていたが、取り壊して、建て替える話が出たこともあったという。しかし、市文化財保護審議会の会議で昭和の遺産として残すべきとの意見があり、市教委は国に登録有形文化財への登録を申請、2010年に認められた。

 同施設開館に当たって課題は耐震化と劣化した部分の補強だったという。老朽化による傷みが目立ったのは屋根、柱、基礎部分だった。改修工事の費用は約1億6300万円だった。

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