2014年6月25日 浅野善一

奈良県)山添・めえめえ牧場、利用広がる羊除草 原点は村の景観、耕作放棄地対策

大久保守さん(左)の元畑で放牧されている羊=2014年6月23日、山添村春日
耕作放棄地の除草対策のため羊の貸し出しに取り組むめえめえ牧場職員の竹内弘昭さん

 山添村伏拝の観光施設「ひつじの公園 めえめえ牧場」(神野山観光協会運営)が除草を目的に羊を貸し出すサービスの利用が県内を中心に広がっているが、原点は村の景観を損なうことになる耕作放棄地の雑草対策。せっかく牧場があるのだから羊に食べさせることで解決できないかと考えた。

 同牧場は1989年開園。2.5ヘクタールの敷地に現在、コリデールとサフォークの2種類57匹の羊が放牧されている。村が設置し、観光協会に管理、運営を委託している。

 羊の貸し出しを考えたのは牧場職員の竹内弘昭さん(50)。牧場内で羊を連れて移動するのは一苦労で、羊は草が目に付くと、その都度、立ち止まって食べ始めるという。そうした様子を見ているうち、気になっていた村内の耕作放棄地の除草に、羊を利用できないかと考えるようになった。

 村では高齢化などで耕作放棄地の除草に十分手が回らない状態という。神野山など村の観光地には多くの人が訪れることから、目に付きやすい県道沿いだけでも効果が期待できそうに思えた。また、牧場に生える草だけでは餌が足りず、別に乾草を購入していることもあり、貸し出せば餌代の節約にもなった。

 2011年秋、試験的に村内の人に羊を貸し出し、柵を巡らせた耕作放棄地に放牧した。季節柄、草は枯れ始めていたが、1カ月ほどできれいに食べてくれた。翌12年、村内の貸し出し先は2件に増えた。

 除草は景観だけでなく、農作物をイノシシから守るためにも必要という。草むらが隣接していると、それがイノシシにとって目隠しとなり、招きやすくなるという。また、耕作地の際は傾斜地になっていることが多く、人による除草は大変だが、羊は平気という。

 貸し出しは草が生える春から秋にかけて。2匹を一組として1カ月単位で貸し出す。これで耕作地の規模の目安となる一反(約1000平方メートル)の除草をほぼできるという。村の公共施設ということもあり、村内への貸し出しは無料にしている。放牧するのに特別な世話は要らないが、毎日の水やりは欠かせないという。

 現在、村内へは一組2匹を貸し出している。2人の人の耕作放棄地を定期的に行き来している。うち1人は羊との触れ合いを楽しみに利用しているという。このほか、同施設から羊を買った人もいる。同村春日の民宿経営大久保守さん(64)はサフォークの雄2匹を買い、広さ約5000平方メートルの元畑に放牧している。2匹では広すぎて、除草は追い付かないが、羊がのんびりと草を食べている風景はのどか。同じ場所で鶏も飼っていて、大久保さんは「羊もいると楽しい」と話す。

 村外への貸し出しは12年が最初。竹内さんがつづる同牧場のブログを見た企業が兵庫県稲美町に開設した太陽光発電所の敷地の除草に利用したほか、橿原市ではJR桜井線の線路沿いの除草に利用する試みが始まった。現在も奈良市立登美ケ丘北中学校など同市内の二つの中学校に貸し出し中。このほか、五條市内の太陽光発電所の敷地の地主が除草対策で2匹を買った。村外への貸し出しは有料で、1匹当たり1カ月3000円(移送料は別)をもらっている。

 羊を村外にも貸し出したのは、広く関心が高まれば村内の人へのPRにもなると考えたから。竹内さんの目標は村内での利用が広がること。「山添村にはめえめえ牧場があるから、耕作放棄地の除草をうまくやっていると評価してもらえたらと思う。もっと村の景観もよくなるはず」と話す。

 村地域振興課によると、村の農地面積は1192ヘクタールで、うち218ヘクタールが有休農地(13年3月現在)。

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