奈良市がセクハラ訴訟敗訴で職員に国家賠償法の求償権行使
奈良市が職員によるセクハラ訴訟敗訴で、国家賠償法で認められている求償権を行使した。訴訟は、まち美化推進課の元嘱託職員の女性が在職中、職場の男性職員(53)=現在は別の部署=からセクハラやパワハラを受けたなどとして、市を相手取り損害賠償などを求めたもの。市は昨年10月、二審の大阪高裁判決で、女性に対し50万円を支払うよう命じられ、同賠償分を男性職員に求償した。職員は応じている。
市によると、市を相手取って起こされた損害賠償請求訴訟で、職員に対し求償権を行使した例は、過去には見当たらないという。
国家賠償法は1条1項で、公務員が職務において「故意または過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体が、これを賠償する責に任ずる」と定めていて、公務員の違法行為による損害賠償責任を国や地方公共団体に求めている。
その一方で、同条2項は「公務員に故意または重大な過失があつたときは、国または公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」と定め、公務員に「故意または重大な過失」があったときに限って、当該の公務員に対する求償権を認めている。
昨年12月の市議会定例会補正予算特別委員会資料によると、女性は2015~17年、同課で電話受け付け業務などに従事。大阪高裁判決では、男性職員が職場で女性に対し、不快感を覚えるであろう性行為を想起させる言動を行ったり、不必要な身体的接触をしたことなどが認定された。
裁判で市は、セクハラ・パワハラ行為について、社会通念上許容される範囲を逸脱するものではなく、原告に精神的苦痛は生じていない、などと主張して争ったが、一審の奈良地裁は女性の訴えを認めて、市に100万円の損害賠償を命じた。市は大阪高裁に控訴したが、判決は覆らなかった。
市まち美化推進課は求償権を行使したことについて「市の弁護士と相談。全国の市町村の事例を参考にしながら判断した。いくつかの事例を目にしている」とする。
市は、男性職員に違法行為はなかったとして裁判を争った一方で、敗訴を受けて、職員に求償することになった。仲川元庸市長は先月19日の定例記者会見で、損害賠償について「市が負担すべきものに当たらない」と述べ、職務とは関係のない個人の違法行為との見解を示した。
市は、2月1日付で男性職員を減給10分の1(4カ月)の懲戒処分にした。また、当時の上司8人についても管理監督責任を問うて厳重注意とした。