奈良市の環境報告書、西暦を併記 年ごとの比較、分かりやすく 審議会委員の意見受け
「奈良市の環境」令和2年版(2020年版)の年号に西暦を併記したグラフの例
年号に西暦を併記した「奈良市の環境」(左)と同「ことも版」の令和2年版(2020年版)
奈良市は、市の環境の状況や環境保全の施策をまとめた年次報告書「奈良市の環境」で使用する年号について、和暦表記から西暦併記に改めた。
文章中の年号については、令和元年版(2019年版)で西暦併記に改めていたが、グラフや表の年号については、先月公表した令和2年版(2020年版)で改めた。それまでも一部のグラフや表に西暦が使用されていたが、利用している元の資料が西暦を使用していることによるものだった。
数値などを年ごとに比較するには、年号が複数の元号にわたる和暦より、西暦の方が分かりやすい。
「奈良市の環境」は、市環境基本条例の「市長は、環境の状況および環境の保全と創造に関して講じた施策に関する報告を定期的に作成し、公表する」との規定に基づいて作成。市環境政策課によると平成元年版(1989年版)から発行されている。
報告書が伝えるのは、市が「省エネ・創エネ」「資源環境」「交通」などの分野で、持続可能な社会の実現に向けて取り組む先導的な事業の実績や目標値、また、市の「自然環境」「歴史環境」「生活環境」などの状況。同課は、市のホームページで公開するとともに、印刷したものを市立図書館や市の関係課、県などに配布している。
同報告書の年号表記を巡っては、市環境審議会(会長・前迫ゆり大阪産業大学教授、11人)の2020年2月会議で、委員から「グラフについても和暦より西暦に統一するか、もしくは和暦と西暦を併記した方が良いのでは」との意見があった。報告書には、関係する数値の推移を示すグラフが多数掲載されているが、時間軸の年号は和暦となっていた。
市環境政策課は西暦併記の意義について「状況を比較する上では西暦の方が分かりやすい。世界的な環境の目標などでも西暦が使用されている」と話す。
同報告書の「こども版」では、グラフの年号は第1号の平成23年版(2011年版)から西暦を使用していたが、文章中の年号は和暦となっていた。一貫性がなかったが、令和2年版では文章中の年号も西暦併記に改めた。
一方、市が作成する行政文書は原則として今も和暦を使用、市のさまざまな刊行物や資料もほとんどが和暦。市全体では西暦併記はまだ限定的となっている。
市が公表している刊行物や資料で西暦を併記している例として記者が確認できたのは、ほかに市地球温暖化対策地域実行計画や市総合計画などだった。
市総務課は「パンフレットや計画は市民にお伝えするということから、特に分かりやすさが求められる。その観点から西暦を併記している。絶対、和暦中心ということではない」と話す。西暦を併記するかどうかは各課の判断という。
同課によると、市の行政文書については、慣例に従って和暦使用が原則。平成から令和への改元の折に、庁内では西暦併記も議論になったが、通知書などの文書の日付の形式を変更するには出力するシステムの改修が必要な上、時間的な制約の問題もあって「直ちには難しい」との判断になったという。