奈良県知事、民博資料保存方針の検討委非公開「決めたのは委員会」と答弁も 設置時に原則公開の付属機関とせず
奈良県議会6月定例会で質問する金山成樹議員(後ろ姿)と質問を聞く山下真知事(奥中央)=2025年6月25日、奈良市、浅野善一撮影
奈良県立民俗博物館が収集した民俗資料の保存の在り方について意見を聞くため県が設置した有識者の検討委員会の公開を求める意見が、6月25日の県議会定例会一般質問であった。山下真知事は「非公開を決めたのは委員会。私に指図する権限はない」と述べたが、一方で知事が委員会の設置に当たって県の付属機関としなかった経緯もある。付属機関を対象とした県の「審議会等の会議の公開に関する指針」は会議の原則公開を定めている。
金山成樹議員(自民党民主党・無所属の会)は「資料の収集、保存について、意思形成過程の透明性を確保するため、検討委員会の議論を公開し、正確な議事録を残すべき」と述べて、知事の考えをただした。
これに対し知事は「博物館の収蔵能力不足は全国の博物館に共通する課題。委員会の検討状況は全国的に高い関心があり、委員会自体や詳細な議事録を公開すれば、個々の委員に対するさまざまな意見や批判が想定され、活発な意見交換ができる環境が阻害される恐れがある」と述べた。
その上で、こうした委員会の公開・非公開や議事録の公開方法については「委員会で議論して決めており、私に聞かれても答えられないし、私にそれを指図する権限はない」とした。
県の公開資料によると、同館がこれまでに収集した民俗資料は約4万5000点に及ぶ。保管場所として本館以外にプレハブや県施設も利用しているが、施設の老朽化により保管環境の劣悪化が進んでいるという。
民俗資料収集・保存方針等検討委員会はこうした状況を受けて設置された。委員は委員長の日高真吾・国立民族学博物館教授ら5人の有識者。県は、民俗資料の収集・保存方針、デジタル保存基準、除籍の手順規定それぞれの策定に向け、意見を聞いてる。会議は昨年11月からこれまでに3回開かれた。6月11日の第3回会議では、民俗資料の収集・保存方針や除籍の手順規定について県が案を示し、委員が意見を述べた。
県はこうした会議体を設置する場合の決まりとして、「付属機関等の設置及び開催・運営に関する要綱」「付属機関設置の判断基準」「審議会等の会議の公開に関する指針」を設けていて、これに基づいて、議会の議決が必要な県付属機関条例に基づく付属機関とするのか、議決が不要な要綱の制定だけで設置できる任意の「協議会・懇談会等」とするのか判断、会議の運営を行っている。
「付属機関設置の判断基準」によると、付属機関に当たるかどうかの判断基準は主に「県職員以外の外部有識者がいるか」「合議制か」の2点。合議制とは「出席者間で協議等を行い、会議の結論として答申、報告、提言、決定、意見集約等の機能があるもの」をいう。一方、「協議会・懇談会等」は「行政運営上の意見交換や個々の意見聴取、連絡調整等を目的とするもの」をいう。
付属機関であれば「審議会等の会議の公開に関する指針」の対象となり、「県政の透明性の一層の向上を図」る観点から、「原則として、公開するものとする」とのルールが適用される。
民俗資料収集・保存方針等検討委員会は外部有識者で構成されているが、付属機関とはしなかった。担当の県文化財課は理由について「いろんな有識者の意見を聞く場として設置したので、今回は付属機関ではない会議とした」と述べた。「合議制」には当たらないとの考え方だ。委員会の設置要綱に会議の公開に関する条文はないという。非公開は当初に委員会で協議して決めたとする。
「奈良の声」が荒井正吾前知事時代に取材した、同委員会に類似する県の会議体として、「奈良公園地区整備検討委員会」「平城宮跡歴史公園歴史体験学習館の整備に関する検討委員会」「平城宮跡歴史公園南側地区の整備に関する検討委員会」があるが、いずれも付属機関として設置されている。
奈良公園地区整備検討委員会は当時、奈良公園バスターミナル建設や奈良市高畑町の奈良公園内への高級宿泊施設誘致が検討対象で、県の計画に対し委員から意見を聞いたが、会議は公開され、計画に関する詳細な資料が傍聴者にも配布された。
ただ、平城宮跡関連の二つの委員会は、奈良公園地区整備検討委員会と同様、委員会の運営要領で原則公開を定めながら、すべての会議が非公開だった。「委員の率直な発言に支障が生じる恐れがある」や「未成熟な情報を公にすることで誤解や憶測を招く恐れがある」を理由としていた。
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