元奈良新聞編集委員、山下栄二さんが随筆集 在職中、1面コラム欄に執筆の177編 折々の世相軽妙に
山下栄二さんの「コラム徒然草 奈良から」
山下栄二さん(本人提供)
元奈良新聞社編集委員でフリーライターの山下栄二さん(61)=奈良県河合町在住=が同紙在職中、1面のコラム欄に書いた記事をまとめた「コラム徒然草(つれづれぐさ) 奈良から」が同新聞社から発行された。親しみやすい軽妙な文章を得意とした山下さんが巧みにすくい取った折々の世相が、本書を通じて浮かび上がる。
山下さんは1984年に入社。県内支局や運動、県政の記者、デスクを歴任した。
同紙1面のコラム欄「國原譜(くにはらふ)」は、複数の筆者が持ち回りで担当。山下さんは「栄」の筆名で執筆した。本書には、1998年から退職する2020年までの期間に執筆したものの中から選んだ177編を収録した。「日本が一億総中流といわれたのは過去。バブル経済崩壊後はすっかり上層と下層に2極化。世襲の政治家が多くなって政治の劣化が著しい」と山下さんはこの間の社会の変化を振り返る。
山下さんのコラムの題材は幅広く、本書では地元奈良に関するもののほか、「人生・暮らし」「文化・歴史・教育」「芸術」「社会・経済」「健康・スポーツ」と多岐にわたっている。中でも造詣が深いクラシック音楽や映画、スポーツに触れたものではより筆がさえた。
超高齢化時代や児童虐待、世界の株式市場、安保法案、AI(人工知能)などから、奈良のブランド力や県民性、さらには美容院で隣り合わせた老婦人の心配事や電車で乗り合わせた女子高校生の会話まで、県内外、国内外のさまざまな事象を題材に批評精神を発揮した。
執筆に当たって心掛けたのは「中学生でも読める分かりやすさ。しゃべるように書くこと。個性は必要だけど、偏った意見にならないこと」。文章術についても「構成は落語の枕と落ちを参考にしている」と明かす。井上ひさしの言葉を引いて言えば、「分かりやすく、ユーモアはあるけれど全体的には真面目に」だという。
山下さんは自著について「駄菓子の詰め合わせのような本。いわゆる銘菓でなくて、駄菓子のように子どもから大人まで味わってもらえたら」と話している。
A5判、205ページ、1320円(税込み)。