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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

島の山古墳周濠にアスファルトやコンクリートのがれき

川西町教委が撤去 投棄の経緯は不明

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2010年5月12日 浅野善一
アスファルト片やコンクリート片、れんがなどがむき出しになった周濠の土=2010年1月27日、川西町唐院
土の中から集められたがれき=4月30日、島の山古墳
がれきが撤去され、きれいに整地された進入路の土=4月30日、島の山古墳

 川西町唐院の国史跡・島の山古墳で、発掘調査のため周濠(しゅうごう)に設けられた墳丘への進入路の周辺からアスファルト片やコンクリート片、れんがなどの産業廃棄物が見つかり、町教育委員会が撤去した。投棄の経緯は不明だが、むき出しのがれきが古墳の景観を損ねていた。

 同古墳は全長190メートルの前方後円墳。2002年、国史跡に指定された。町教委はこれを受けて2003年から5年間、墳丘を調査。町教委によると、この際、重機を入れる目的などで、古墳の北側に、周濠沿いの道路から後円部の先端部分に渡る進入路を設けた。進入路は幅約5メートル、長さ33メートルで、1トンの土のう80袋で基礎を作り、その上にほぼ同量の土をかぶせた。将来、古墳を史跡公園として整備する計画があるため、調査終了後も撤去しなかった。

 ところが昨年夏、周濠にアオコが大量に発生し、水質が悪化。ひどい悪臭を放ち、周辺住民から苦情が出た。進入路が水の循環を妨げているのが原因と分かり、町教委は12月、進入路を切り崩し、土を周濠の道路側に寄せた。そうしたところ、アスファルト片やコンクリート片、れんがなどが出てきた。ただ、進入路は再利用の予定があるため、寄せた土はそのままにしていた。これに対し4月末、県廃棄物対策課と県教育委員会文化財保存課の指導があり、撤去することになった。

 同月30日の撤去作業では、取りあえず寄せてあった土の表面部分を掘り返し、出てきたがれきを撤去、きれいに整地した。量はトラック1台分で、がれきの大きい物は直径60~70㌢、厚さ15㌢ほどあった。アスファルト片が目立った。

 当時、進入路を建設した同町結崎の杉井工務店の代表者は出てきたがれきについて「町内の建材店から買った山の土を使った。がれきなどは入っていなかった」としている。一方、町教委総務課の深沢達彦課長補佐によると、発掘調査で水を抜いた際、周濠の道路に面した付近から自転車やタイヤのほか、コンクリート片やアスファルト片が投棄されているのが見つかったという。このため進入路の建設や撤去の際、周囲にあったこうしたがれきが進入路の土に混じったのではないかとしている。しかし、いつ誰が投棄したかは不明だ。

 島の山古墳は4世紀末から5世紀初めの築造でこの時期の古墳としては最大規模。前方後円墳では県内約300基中20位、全国でも40位と屈指。1996年、前方部の埋葬施設から棺外遺物として133点の石製腕飾類、棺内遺物として鏡、石製合子(ごうす)、首飾り、腕輪などが出土、重要文化財に指定された。町は同古墳を「町の宝」と位置付け、平成27、28年ごろから5年計画で史跡公園として整備する。

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