納税者の権利憲章策定が大詰め
国税不服審判所の中立に課題も
政府税調の三木氏が税金オンブズマンで講演
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大詰めを迎えた納税者権利憲章の行方などを語った三木義一・政府税調専門家委員会座長=2010年10月28日、大阪市北区の大阪弁護士会館 |
政府税制調査会の専門家委員会・納税環境整備小委員会の三木義一座長(青山学院大学教授)が28日、大阪市北区の大阪弁護士会館で開かれた「税金オンブズマン」(代表委員、福西幸夫=奈良市東登美ケ丘5丁目)の総会で講演。閣議決定された税制改正大綱に沿って、納税者の権利憲章策定への作業が大詰めを迎えていることなどを解説した。一方、国税不服審判所の中立性を高めるための改革は先送りされている現実にも言及した。
同オンブズマンは、徴税の手続きが適正かどうかを監視する老舗的な団体だが、20年の歩みの中で政府税調の委員が講演したのは初めてで、政権交代による税調の変化を印象づけた。
三木氏は講演の中で、日本の納税制度はこれまで、国民らが義務を履行するための体系として存在したが、これからは税務調査を受ける納税者の側も、きちんと権利が保護されるような体系が必要だと指摘。閣議決定された納税者の権利憲章策定をめぐっては、新法の制定になるのか、または現行法における権利を解説したパンフレット型になるのか、「大詰めを迎えている」とした。
一方、国税不服審判所については「第三者性が弱い」と批判し、国税庁からの切り離しが課題になっているものの、「財務省は組織問題に触れてほしくないという意識がある」として、進展していなことを明らかにした。
関連して、加算税の課税処分を受けた人は年間約23万4760人(2008年度)いるが、国政不服審判所に対して審査請求をした人はわずか549人しかいない現実を三木氏は紹介。この数字自体が、税制調査会の専門家委員会の論議によって、初めて公にされた数字だという。
また、払いすぎた税金の還付などをめぐり、納税者側に不利になりがちな更正の請求期間の問題なども、同委員会で論議されていることにも触れた。三木氏は「税調の役割は基礎的な論点出しであり、あとは政治家の判断だ。地方税法はまだ論議されていないが、国税と歩調を合わせて必ず改革される」と話した。
税金オンブズマンの代表委員の福西さんはあいさつの中で、国税局職員がからんだ偽税理士・脱税指南事件の告発によって、会が1990年に発足したことを振り返った。この間、官僚の通達で評価額が急騰した固定資産税の国賠訴訟に取り組んだことにも触れ、力強く今後の抱負を語った。(浅野詠子)
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