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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

「課税庁の権限ばかり強化」 国税通則法改正に疑義

納税者の権利憲章見送り

湖東・元静岡大教授が税金オンブズマン総会で講演

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2011年10月30日
講演する湖東京至氏=2011年10月29日、大阪市北区のプロボノセンター
 国税通則法の改正案が一転し、納税者の権利憲章の策定が見送られた問題などをめぐり、湖東京至・元静岡大学教授(税理士)が29日、大阪市内で開かれた税金オンブズマン(福西幸夫代表委員、奈良市在住)総会で講演。28日に国会に提出された修正案は「課税庁の権限ばかりを強化した内容」と厳しく批判し、復興増税などによる与野党の駆け引きで、当初の改正案が目指したプライバシーの保護などが棚上げにされたと、疑義を呈した。
 徴税は行政の持つ強大な権限で、国民は納税の義務を負うが、日本は先進諸国と比べると、納税者の基本的人権を保護する制度が希薄だといわれる。そうした批判も踏まえ、政府はことし1月、国税通則法の改正案を国会に出し、法律の新しい名称案の中に「納税者の権利及び義務に関する法律」という文言まで加えていた。また、納税者のプライバシー保護などに配慮した納税者権利憲章の策定を法案に盛り込み、昨年10月の税金オンブズマン総会においても、政府税調委員が改正へのうねりについて講演し、政権交代がもたらした新しい税調の姿を印象づけた。
 しかし湖東氏によると、震災復興の関連法案をめぐる与野党の駆け引きの中で、民主党がかなりの譲歩をし、改正案の内容は著しく後退したという。課税庁や自民党関係者は、「納税者の権利」という言葉そのものをよく思っていない、とも話す。
 今回の修正案が可決されると、課税庁は修正申告の勧奨をすることができる。納税者からの税額の減額請求(更生の請求)は、現行の1年から5年に延長され、大きな進展とされるが、現行の1年という規定は国際社会では通用しない次元のものだという。さらに、請求を受けて課税庁が実施する税務調査で「偽り」が見つかったときは、罰則が科せられてしまい、「乱訴を抑制しようという狙いがある」。また、当初の改正案では、任意の税務調査は「文書による事前通知を行う」ことを盛り込んでいたが、修正案はこれも撤回している。
 一方、湖東氏によると、自民党政権時代の2002年、税務行政におけるプライバシーの尊重を義務づけた法案(衆院法制局案)が作られたことがあり、内容も全般的に充実していたという。「大増税時代に、こうした原点に立ち帰るべきでは」と話した。(浅野詠子)
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