奈良市内の自治会が年末恒例の餅つき大会をやめてしまった。会場にしていた地区の公園が火気使用禁止であることを知ったためだ。同市は、市が管理する公園での火気使用を禁止している。一方で県内には、地域の夏祭りなど自治会行事に限って火気使用を容認する例もある。住民のための公園であり、規則の見直しも可能ではないか。
この自治会があるのは、富雄川に近い市南西部の小さな新興住宅地(約100世帯)。街区公園が一つある。餅つき大会は1985年の住宅地完成後まもなく、子供たちを喜ばせようと始められた。公園に鉄のかまどを用意し、まきをくべて湯を沸かし、餅米を蒸した。2009年にノロウイルス感染を心配して中止されるまで続いた。この後、自治会は公園での火気使用が禁止されていることを知り、継続を断念した。
街区公園は、都市公園法に基づき半径250メートル以内に1カ所を標準として配置される、住民に最も身近な公園。公園の使用には市の許可が必要だが、これまで自治会はその認識がなかったため、市から火気使用禁止の説明を聞く機会もなかった。
市公園緑地課によると、同法施行令は「公園管理者が指定した場所以外でたき火をすること」を危険な行為の一つとして禁止しており、これが火気使用禁止の根拠になっている。同市の街区公園にはそうした指定場所はないという。
一方で、同課は「現場まで行って確認できないが、現実的には夏祭りなどでフランクフルトソーセージを焼いてたりしているようだ」ともいう。実際、餅つき大会をやめたこの自治会の隣の自治会は、先月30日の夏祭りでプロパンガスのコンロを使って焼き鳥を調理した。「公園の使用には許可が必要なことが浸透していない」(同課)という状況も加わり、火気使用に黙認状態があるのも事実だ。
県内の他の市はどう対応しているのか。残る11市の担当課に電話取材したところ、いずれも原則禁止としたが、生駒、天理、香芝、橿原、宇陀の5市は自治会などの行事に限って、消防署への届け出などを前提に容認していた。天理市はさらに、火気を使う場所を示した公園の見取り図の提出を求めるなど、手続きの様式を整えていた。「自治会が責任をもってやるというのを禁止するのはどうか。一律に禁止したら無許可でやる人が現れる」(同市まちづくり事業課)とした。
また、多くの市は公園の草刈りや清掃、設備の不具合の報告など、管理の一部を地域の自治会に委託する制度を導入しており、「維持管理をしてもらっている自治会の要望を断れない」(生駒市公園管理課)などの声もあった。
餅つき大会を開いてきた自治会の元会長の男性(75)は「餅つきは子供が喜んでくれた。市の公園だからあまり言えないが、火気の使用を認めてくれてもいいのではないかという思いもある」と話す。
自治会、住民が公園使用の規則づくりに参加することはできないのか。奈良市でも、公園管理の一部を自治会に委託している。花木幸治・市公園緑地課長は「自治会だけでは処理できない事柄もある。ほかにも地域の団体があり、どういう団体に火気使用を許可するのかも微妙。旧市街地の公園は小さく建物が密集しており、どこで線を引くのかという問題もある」と許可の難しさを挙げたが、一方で「将来的には検討していかなければならない」ともした。(浅野善一)
なら燈花会 火気使用認め、一大行事に成長