社殿修理、地元に重い費用負担
五條の阿陀比売神社、傷みひどく
市指定文化財、半額補助でも
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雨漏りを防ぐため檜皮ぶきの屋根をビニールシートで覆った阿陀比売神社本殿(手前)と摂社社殿(奥)=五條市原町 |
五條市原町の市指定文化財、阿陀比売神社本殿と摂社社殿(ともに江戸時代前期)の傷みがひどくなり、修理を迫られている。小さな集落の小さな神社だが、修理費用は数千万円規模になる見通し。市が最大で半額を補助するものの、過疎化による氏子の減少もあり、地元の負担は重い。地域の文化遺産はそんなふうにして守られている。
神社の歴史は古く、延喜式(927年)の神名帳に記載がある。こぢんまりとした境内の手前に拝殿、奥に本殿と摂社の八阪神社社殿の二つが並んでいる。ともに一間社春日造りで17世紀の建築とされる。市が1987年に指定した市指定文化財第1号の一つである。
市教育委員会文化財課によると、二つの建物ともに特に檜皮(ひわだ)ぶきの屋根の腐食が目立つ。檜皮はおよそ30年ごとにふき替えが必要で、現在、その時期を迎えている。また、基壇や束石(つかいし)などの基礎部分がずれて、建物が傾いており、柱にも腐食が見られるという。3年前には、雨漏りを防ぐため屋根をビニールシートで覆わざるを得なくなった。
このため修理の必要な個所は建物全体に及び、費用も大きくなるという。中でも檜皮のふき替えは高額になる。県文化財保存課建造物係によると、特に近年は職人の高齢化や減少、それに伴う材料の檜皮の供給減でじわじわと上昇しているとのことだ。
同神社代表役員の東康朝さん(60)によると、費用はこれまでの蓄えや3年前に始めた氏子1軒当たり月5000円の負担金などで賄うという。県教育委員会に対し、県と市で合わせて8割の補助が期待できる県指定文化財への格上げも要望したが、同時期の社殿は県内に多くあるとして、かなわなかった。また、神社を守っている原町の氏子(同町の全世帯)は現在35軒。100年近く前、世帯数は80軒余りあったといい、こうしたことも負担増につながっている。
一方、補助をする市の予算も限られており、順番待ちだ。2009、10年度は同市黒駒町の御霊神社(県指定文化財)の修理に、市の負担分として約900万円が支出された。
地元では県文化財保存課の専門家に修理費用の見積もりを依頼しており、近く結果が出る。この額次第で、どこまで修理するか決めることになるという。東さんは「重い負担も受け入れているのは、神社を何とか修理したいという住民の強い気持ちの表れだと思う」と話している。(浅野善一)
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