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入江泰吉さん宅を公開へ 没後20年で奈良市2012年、人物像に迫る事業を展開
奈良大和路の風景を有名にした奈良市の写真家・入江泰吉さんが2012年に没後20年となるのを機に、市は同市水門町の入江さんの自宅を改修し、公開することを決めた。13日の定例議会で、藤本孝幸議員(民主党)が没後20年への取り組みを尋ね、片岡隆弘・市民活動部長が明らかにした。市は、入江さんが亡くなった後の1999年、夫人のミツエさん(故人)から自宅の寄贈を受けたが、活用の方針は決まっていなかった。
市文化振興課によると、入江さんは1992年1月16日、86歳で亡くなった。入江さんには子供がいなかったため、ミツエさんは生前に自宅を寄贈し、04年に亡くなるまで住んでいた。 自宅は東大寺戒壇堂に向かう、落ち着いた通りの一角にある。敷地は広さ約504平方メートル、建物は木造平屋建てで広さ約209平方メートル。中心となる母屋は他の場所から移築された日本建築で、大正時代のものとみられる。この他は、その後に増築されたものという。 入江さんの作品は、同市高畑町の市写真美術館で所蔵、公開されており、自宅の方は入江さんの人となりをしのぶことのできる施設にしようという。母屋には書斎や暗室が残っている。古い建物のため、改修では耐震工事などを行うという。このほか、入江さんが裏庭に好んで植えた万葉の花を再現することも考えている。裏庭に沿って流れる吉城川のせせらぎが聞こえるのも魅力という。 また、入江さんの自宅は文化人のサロンでもあったといい、一時期、同市高畑町に居を構えた作家の志賀直哉や、大和路に題材を求めた画家の杉本健吉との交流をしのぶこともできるという。 計画では、2012年度に実施設計、13年度に工事、14年度に公開を予定している。 市は、入江さんの没後20年となる来年、人物像に迫る事業を展開。自宅公開に向けた取り組みのほか、1月2日~4月15日は「入江泰吉の東大寺」展を開く。入江さんは晩年、「私は東大寺のお導きによって写真家になれた」と語っていたという。4月21日~7月8日は「奈良大和路・春夏秋冬」展を開く。このほか、市広報紙「ならしみんだより」で1月号から、入江さんの人に焦点を当てた連載記事を掲載する。 入江さんの門下の写真家らでつくる水門会の会長、矢野建彦さん(66)は「放置しておけば朽ちていくばかり。何とかしてほしいと考えていたので良かった。弟子としてあそこでお世話になり、たびたび遊びに行った。座敷や書斎が目に焼き付いている。入江先生は書斎でガラス絵を描いたり、仏さんを彫ったりしておられた。そういうものも、そのまま残っていれば、うれしい」と話している。(浅野善一、12月16日に末尾の矢野さんの談話を追加)【続報へ】 |
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