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家庭ごみ不法投棄、回収578件 テレビ急増奈良市2011年度 家電はリサイクル料金も負担
家庭の粗大ごみなどの不法投棄が後を絶たない。奈良市では2011年度の回収件数が12月までで578件に上った。特にこの2年間は、地上テレビ放送のデジタル化に伴い、使えなくなった旧式のテレビの不法投棄が急増している。主要な家電製品は、回収した市がリサイクル料金も負担しなければならないが、11年度はすでに当初の予算を使い切ってしまった。
市まち美化推進課によると、回収する不法投棄物は、家庭から排出されたと考えられるごみ。回収のきっかけは、市民からの通報が大半という。 市内で不当投棄が目立つ地域は、第二阪奈道路周辺や奈良ドリームランド跡周辺などの市郊外。場所では、人通りの少ない道路の崖下、河川、公園近くなど。地区のごみ置き場の近くに捨てられる場合もある。一度ごみが捨てられると、さらに新たなごみが捨てられるなど、ごみがごみを呼ぶこともあるという。 回収件数は、この6年間では09年度まで300件台だったが、10年度は658件に増え、11年度も600件を超えそう。内訳で多いのは、洗濯機やテレビ、自転車、布団、机などの大型ごみ、レジ袋に入った分別の悪い生活ごみなどだ。
消費者はテレビや洗濯機を廃棄する場合、家電リサイクル法によって、リサイクル料金を負担する。額は、テレビが大きさにより1785円か2835円、洗濯機が2520円などとなっている。 しかし、回収した家電については、市が負担せざるを得ない。その費用として09年度に17万9000円、10、11年度に各27万5000円を支出した。11年度はすでに当初の予算を使い切っており、136台のほかに、リサイクル処分をできず抱えているテレビが10数台ある。 不法投棄の対策は、週2、3回の巡回と警告センサーの設置。センサーは不法投棄の多い場所に設置し、近づくと光と音声で警告を発する。現在、18カ所にあり、毎年1カ所ずつ増やすようにしている。費用は1カ所当たり25~30万円かかる。近くに人家があれば効果があるが、そうでない所では効果も低いという。 こうした不法投棄に対しては、廃棄物処理法で懲役刑や罰金刑が定められている。ただ現実的には、ごみに捨てた人物を特定する情報がないなどで、警察への通報に至る例はほとんどないと、同課は言う。 また、不法投棄の場所が私有地の場合は、回収の対象にならない。公道上が原則となるためで、道路際に捨てられているごみは対象となるが、私有地では土地の所有者や管理者が処分するしかない。 市は、市民の大型ごみの回収を電話で受け付けており、石部光則・同課長は「利用してほしい」と話している。 +++ 〈視点〉捨て得になるのか +++記者が住む奈良市六条山地区の周辺は、のどかな田園地帯。しかし、そうした人目に付きにくい場所であるのをいいことに投げ捨てられたごみが、至る所で目に付く。人家のないあぜ道沿いは特にひどく、缶、ペットボトル、菓子の箱、生活ごみらしきものが入ったレジ袋、使わなくなった日用品の類いが草むらややぶの中に転がっている。昨年夏、100平方メートルほどの休耕地で、茂っていた草が刈り取られ、捨てられたごみがまとめられていた。相当な量で、小さなトラック一台分ほどはあった。草むらの状態にしておくと、ごみを投げ捨てられやすい。とはいえ、ごみを捨てた側がいる一方で、責任を土地の関係者だけが負うのも少し気の毒だ。 六条山の山道では、粗大ごみの固まりを見つけ、市まち美化推進課に通報した。ブラウン管テレビと100リットルほどの大きなごみ袋、段ボール箱などだった。透明のごみ袋からは、枕などの生活用品やコンサートの半券などが見えた。この不法投棄が取材のきっかけにもなった。同課によると、周辺は不法投棄の多発地帯という。場所によっては、自治会が作った不法投棄禁止の看板が10メートル前後の間隔であり、それをうかがわせる。 市が回収したこのテレビは20型ほどだったので、捨てた人物は、リサイクル料金に収集・運搬料金を加えた、本来負担すべき何千円かの費用を免れたことになる。しかし、それを税金で賄えば、結局、本人を含む市民の負担だ。家電だけではない。全ての不法投棄物の回収や防止対策に、車の燃料費や人件費、センサー設置費を支出している。費用がかかればかかるほど、捨てた人々を含む市民の負担が増すことになる。本当に捨て得になるのか。(浅野善一) |
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