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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

奈良市塩漬け地 有力市議から単価2倍で 95年、JR駅前区画整理地内 同時期取得の近接地比較

奈良市土地開発公社が保有するJR奈良駅前の2件の塩漬け土地=市コミュニティ住宅から

奈良市土地開発公社が保有するJR奈良駅前の2件の塩漬け土地=市コミュニティ住宅から

JR奈良駅周辺土地区画整理事業 1平方メートル当たり単価比較(奈良の声調べ)
  市土地開発公社
の取得単価(円)
仮換地調書
の評価指数
実勢価格(円)
(2009年度末)
浅川氏の土地
(対近接土地比)
(総額)
202万4768
(2.19倍)
(4億5516万8000)
924
(1.06倍)
15万2858
(1.07倍)
(3438万1000)
近接土地
(総額)
92万2476
(15億1283万3000)
867 14万2571
(2億5392万4000)

 奈良市土地開発公社が1995年、市が進めていたJR奈良駅周辺土地区画整理事業の計画地内で、当時、市議だった浅川清一氏(故人)から取得した土地の単価が、同時期に同計画地内で取得した近接土地の2倍以上だったことが分かった。同区画整理事業の換地設計基準に基づく評価では、両土地の単価にほとんど差はなかった。公社と市に、両土地の取得額や仮換地調書などを情報開示請求して分かった。

 浅川氏の土地は、取得から17年を経た今も、市による買い戻しができておらず、いわゆる塩漬け状態。2011年3月に発表された同公社経営検討委員会報告書は、買い取りありきで土地の必要性の検討が十分に行われなかった可能性や、買い取り額が明らかに作為的に高額に設定された可能性を指摘している。単価の差は、この「高額」を裏付けるものの一つになりそうだ。

 浅川氏は議長を5期務めるなど、市議会の有力議員の一人だった。同報告書は、同氏から市幹部に圧力があった可能性も指摘している。ただ、同氏の実名は伏せられ、「市議」とのみ記されている。

 同区画整理事業では、1991年に仮換地指定(造成工事前の換地の計画)、2006年に換地処分(造成工事後の換地の確定)を行った。

 市が両土地を公社に取得させたのは、換地の計画段階。浅川氏の仮換地は、駅前の幅16メートルの道路に面した広さ約224平方メートルの宅地で、1995年2月に4億5516万8000円で取得。1平方メートル当たりの単価は約202万4000円だった。

 これに対し、近接土地は、この道路から西へ1区画分奥の幅6メートルの道路に面した広さ約1639平方メートル(換地確定後の面積は約1781平方メートル)の宅地。所有者が土地区画整理事業の減歩率を不服として、市を相手取り提訴、一審で市が敗訴したことを受け、同年3月に15億1283万3000円で取得した。1平方メートル当たりの単価は約92万2000円だった。両単価の開きは2.19倍に上った。

 一方、土地区画整理では、土地を指数で評価し、換地の前と後で指数が等しくなるようにする。同区画整理事業の換地設計基準に基づき作成された仮換地調書によると、単価に相当する1平方メートル当たりの評価指数は、浅川氏の土地が924、近接土地が867(調書では土地は2分割されていて評価が異なるため平均を算出した)だった。開きは1.06倍しかなかった。市は仮換地指定で、両土地の単価についてほとんど差のない評価をしながら、取得に当たっては異なる選択をしたことになる。

 また、市が明らかにしている両土地の最近の実勢価格(2009年度末)は、浅川氏の土地が3438万1000円、近接土地が2億5392万4000円。1平方メートル当たりの単価(換地確定後の面積で算出)は浅川氏の土地が15万2858円、近接土地が同14万2571円となる。こちらも開きは1.07倍しかない。

 両土地の取得単価のどちらが妥当なのか。近接土地の取得額は、市が裁判で敗訴したことを受けて、3社の不動産鑑定をもとに決定された。

 これに対し、浅川氏の土地は登記簿によると、当時、取得額とほとんど同額の4億5500万円を債権額、信販会社を抵当権者とする抵当権が設定されていた。同氏は、バブル景気で県内地価が最も高騰した1990年に土地を買っており、この際、同抵当権が設定されている。また、不動産鑑定は、近接土地を鑑定した3社とは別の1社が行っていた。経営検討委員会の報告書は、同氏の土地の鑑定額について、鑑定基準の範囲内といい得るのか疑問と指摘している。

 市は両土地を、駅周辺地区駐車場建設を名目として公社に先行取得させたが、事業化のめどは立っていない。現在は、2011年4月に開所した近くの市保健所・教育総合センターが公用車駐車場として使用している。

 同公社による土地取得は全額借金のため、浅川氏の土地の2009年度末時点の金利を含めた簿価は、取得時より約1億2000万円多い、5億7643万9000円に膨らんでいる。また、実勢価格との差額から見た含み損は5億4205万8000円に上る。

 市JR奈良駅周辺整備事務所の亀岡正幸所長は、両土地の取得単価に2倍以上の開きがあった理由について、「当時の状況が分からないので、答えられない」とした。

 当時、担当部署の幹部の一人だった元職員は、浅川氏からの土地の取得額が高額との指摘がある点について、「鑑定に従っている。具体的なことは守秘義務があり、答えられない」とした。

 また、当時の市長、大川靖則氏(在任期間1992~2004年)は取材に対し、浅川氏の土地を取得する直前まで助役だった人物(在任期間1991~94年、故人)の名前を挙げ、JR奈良駅周辺土地区画整理事業はこの助役が担当、自身は関わっていなかったとする、説明をした。【続報へ】

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