「二人の采女」上演 観客、朗読劇楽しむ
県内劇団の若者ら熱演
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上演された朗読劇「二人の采女」=2012年6月23日、奈良市高畑町の大乗院庭園文化館 |
奈良市と福島県郡山市の両地にある采女(うねめ)伝説の物語の違いを、当時の地方と中央の関係でとらえ、朗読劇にした「二人の采女」の公演が23日、奈良市高畑町の名勝大乗院庭園文化館であった。奈良市在住の作家、寮美千子さん(56)が書き下ろした作品を、県内劇団の若者らが熱演した。観客約50人が楽しんだ。
采女は奈良時代、天皇に仕えた女官の名称。天皇は、各地の地方行政官である郡司に子女を采女として貢がせた。奈良の伝説では、采女は、天皇の寵愛(ちょうあい)を失ったことを悲嘆して猿沢池に身を投げたことになっている。一方、郡山では、婚約者がありながら、年貢米免除の代わりに采女として差し出された里長の娘の物語になっている。「二人の采女」は、この異なる物語のそれぞれの采女が登場し、自分こそが本物であると主張する。
演出は、劇団「Cross Rope Life(クロス・ロープ・ライフ)」を主宰する安堵町在住の新居達也さん(26)。出演は新居さんの演劇仲間の若者たち。関西各地で朗読行事を行っている奈良市在住の菅原哲夫さんも客演した。
朗読は国名勝の庭園を望む和室の一室で行われた。演者は語りとわずかな動きだけで臨場感あふれる情景をつくり出し、観客を物語の世界に引き込んでいった。作品は笑いを盛り込んだ喜劇調になっていて、観客はユーモアを楽しみながら、地方と中央の物の見方の違いに思いを巡らした。
公演は、東日本大震災の避難者でつくる「奈良県被災者の会」を支援する狙いもあり、観客の中には同会代表の高橋周介さん(38)もいた。原発事故現場に近い福島県南相馬市出身の高橋さんは「避難しているいとこの母親のことを思い出した。年寄りは家に戻れず大変な思いをしている。劇は国と庶民の隔たりを表現しているように感じた」と話した。
寮さんらは、この日の収益と会場で集めた募金合わせて3万円余りを同会への寄付として高橋さんに手渡した。(浅野善一)
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