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仕組債問題、外部委員会による調査の例も兵庫県朝来市 HPで運用状況公開は福岡県飯塚市
奈良県市町村総合事務組合が退職手当基金で保有していた仕組債を満期前に売却し、巨額の元本割れが発生した問題。「奈良の声」の取材で明らかになったが、組合自らは公表するなどしておらず、住民への説明責任を果たしていない。一方で全国に目を向けると、保有する仕組債について外部委員会による調査を行った兵庫県朝来市の例や、仕組債の契約内容や運用状況をホームページで公開している福岡県飯塚市の例もある。 奈良県市町村総合事務組合などの一部事務組合は、複数の地方公共団体が一部の事務を共同で処理するため設立される。特別地方公共団体の一つであり、財源は構成する地方公共団体の負担金。行政運営について求められる住民への説明責任は、普通地方公共団体の市町村などと変わらない。 証券会社などに賠償請求朝来市は、対米ドルや対豪ドルの円相場に連動した仕組債と指定金銭信託に61億5000万円を投入。2010年2月時点の時価は対元本割合で75.46%で、含み損の問題が顕在化している。加えて、円高傾向が続くことで金利がゼロもしくは極めて低いまま保有が長期化する、いわゆる塩漬けの問題が懸念されている。市の調査は、弁護士を中心とした調査委員会が仕組債を販売した証券会社や銀行に違法行為が認められるかどうかを検討。委員会は2010年3月、市に報告書を提出した。市は本年6月、販売者を相手取り含み損に対する損害賠償を求めて提訴した。市議会は市より早く、調査特別委員会を設置するなどして調査を行っている。 飯塚市は現在、対米ドルの円相場に連動した仕組債を20億円分保有している。ホームページでの公開は、新聞などで仕組債の問題が報じられ、市議会でも質問が出たことを受けて、2010年度に始めた。公開内容によると、保有する二つの銘柄のうちの一つは、円相場が107.51円以上で利息が発生し、2008年12月以降、金利ゼロの状態が続いていることなどが分かる。市財政課は「市民に納得してもらえるかどうかは分からないが、説明責任を果たしている」と話す。 総務省「説明責任果たす必要」国会でも地方公共団体が保有する仕組債の塩漬け問題が取り上げられた。2009年6月11日の参議院財政金融委員会で、政府参考人の望月達史・総務大臣官房審議官が「そういった恐れのある商品については運用を決定する段階、運用の過程についてきちんと市民に情報を公開し、説明責任を果たす必要がある」と見解を述べている。 奈良県市町村総合事務組合は2010、11年度、退職手当基金取り崩しのため、基金で保有していた仕組債68億円のうち55億円を満期前に売却、20億円の元本割れが発生した。総務省の2009年の調査で、全国の24市町村が仕組債やそれに類似する金融商品を購入していたことが分かったが、同組合のように売却により実損が顕在化するのは、一部事務組合を含めて地方公共団体では初めてとなる可能性がある。しかし、組合はこれを運用益の範囲内だとし、損失ではないとしている。 |
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