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奈良市佐紀町にある水上池は平城宮跡大極殿北側にあり、周辺にはコナベ池や磐之媛命陵など数カ所の水辺と雑木林が点在するため、四季を通じてさまざまな野鳥が観察される。 特に秋から冬にかけてはマガモやコガモ、ヨシガモなど数多くの種類の水鳥たちが渡来し、過去にコハクチョウやレンカクなどの珍しい野鳥が飛来したため、探鳥地として全国的にも有名である。 これ以外に水上池で見られる野鳥は、オシドリ、オナガガモ、カルガモ、ミコアイサ、ハシビロガモ、カワウなどのカモ類の他、カワセミやシメ、ジョウビタキ、ベニマシコなどの小鳥も観察される。また、池の上空には時折、オオタカやハイタカ、チョウゲンボウなどの猛禽(もうきん)類も出現する。 水上池に飛来する野鳥の中でも全身が真っ白で目の周囲が黒く、まるでパンダのような色彩のミコアイサは人気が高く、たくさんのカメラマンがやって来て、池の縁から望遠レンズを向け、水面に真っ白な姿を現すたびにシャッターを切っている。 ミコアイサは冬鳥として全国の河川や湖沼、ため池などに飛来し、カワウのように潜水して魚を捕らえる野鳥で、他のカモ類のように数多く飛来することはなく、小群でいることが多い。 体長は約42センチ。雄の全身は真っ白で、くちばしは灰色。目の周囲と後頭部、身体の一部に黒い部分があり、美しい野鳥だ。ただ、水上池にやって来る雄のミコアイサは警戒心が強い。なかなか人々の目の前にやって来ず、池の真ん中付近にいることが多い。 たくさんの野鳥が越冬する水上池だが、周囲の環境に大きな変化は見られないものの水質は年々悪化している。池の底には釣り人が廃棄したごみや不法投棄物などが散乱しているようだ。 先日、私が取材に訪れた折、水面で盛んに泣き叫ぶカルガモがいたため、注意して観察してみると、プラスチックのリング状のものが頭部とくちばしの間に挟まって抜けなくなり、苦しんでいた。異変に気付いた仲間のカルガモやバン、コハクチョウなどが近づき様子を見守っていた。中でもコブハクチョウは、くちばしを使って何とかカルガモのリング状のものを外そうとするが、容易にはいかなかった。 災難に遭った異なる種を救おうとする野鳥の行動を見たのは初めてで、驚いた。見ていた私自身、回りの鳥たちが必死になっているのだから、人間の私が何とかしなければという思いはあったものの捕獲する手段もなく、途方に暮れたまま情けない思いで帰った。 今後、私たちは人間のせいで野鳥たちが傷付くことのないように、池の周囲や底にあるごみを撤去し、きれいな環境を築くことに努力しなければいけないと思う。二度とカルガモのような悲劇を繰り返さないためにも。 (よな・しょうぞう=野鳥写真家、生駒市在住)=毎月第2、4月曜に更新 ◇連載前へ >>第19回「観光客まばら集まる野鳥―奈良公園の晩秋から初冬」
◇連載次へ >>第21回「清流の野鳥脅かすことも―釣りブーム 山奥立ち入り」
◇これまでの「やまと鳥事情」
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当局からの発表に依存しなくても伝えられるニュースがあります。そうした考えのもと当サイトを開設しました。(2010年5月12日)
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