記者の請求で奈良県が開示した2007年度の平城宮跡国営公園化検討業務委託の起案文書の日付が記入漏れとなっていた問題を受け、文書を作成した県奈良土木事務所が同事務所の同年度の他の起案文書全てを点検したところ、さらに237件の記入漏れがあったことが分かった。「奈良の声」に対し、6日までに明らかにした。同事務所は、公文書に対する意識の低さがあったとした。
点検を行った理由は、一つ記入漏れが見つかった以上、他にもあると予想されたため。ただ、対象は平城宮跡の起案文書の記入漏れが見つかった07年度に絞った。起案文書は年間で平均5000件に上り、複数の年度を対象にするのは物理的に困難と判断した。
起案文書には工事や用地購入、業務委託などに関わる事業執行うかがいや支出負担行為うかがいのほか、道路や河川の使用許可うかがいなどがあり、いずれも起案日、決裁日、施行日を記入するようになっている。点検では、きっかけとなった平城宮跡の起案文書と同様、この3つの日付がそろって記入漏れとなっているものを調べた。
この結果、平城宮跡の起案文書2件を合わせて239件の記入漏れが確認された。07年度の起案文書全4830件の4.9%に当たる。
記入漏れ発覚のきっかけは、記者の開示請求で交付された平城宮跡の起案文書の写し。原本の複写であるにもかかわらず、起案日などが直接ボールペンで書き込まれているなど不審な点があったため、同事務所に説明を求めたところ、もともと記入漏れだったもかかわらず開示に当たって職員が日付を書き加えていたことが分かった。また、委託に当たって業者に送付したとみられる見積もり依頼の文書について、公印を使用する際に行う文書施行簿への記録がされていなかったことも分かった。
同事務所は一連の問題を受け、これまでに定例の課長以上の会議や係長以上の会議で、情報公開制度の趣旨や適正な文書管理について周知徹底を図るとともに、約70人の全職員に対し、県作成の文書事務の手引きを配布したという。
また、職員が外部に向けて発送する公文書に公印を使用する際には、文書施行の起案文書に庶務課長から日付入りの審査印を受けるよう、仕組みを改めた。こうした仕組みは県の本庁では実施されている。
山岡伸幸・同事務所次長は「技術職の職員は設計図を書くのが専門で、起案文書の記入はおろそかになったのかもしれない。点検で日付の記入漏れが多く見つかり、平城宮跡の起案文書や文書施行簿の記入漏れに、意図的なものはなかったと解釈している」としている。