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奈良県奈良市 塩漬け体育施設用地の計画図「不存在」 2007年、市議が資料請求で確認も
奈良県の奈良市土地開発公社が保有していた塩漬け土地の一つ、同市横井町の体育施設整備事業用地に関し、2007年ごろ市議が市に資料請求して存在が確認された施設配置図が現在「不存在」となっていることが、市への取材で分かった。当時、計画を示す資料として確認されていたのは、同図だけだったとみられる。同土地をめぐっては、事業の実体があったのか疑問視する指摘がある。取得の経緯をたどるためには宙に浮いた事業の文書保存の在り方が課題だ。 土地は広さ約3万8000平方メートルの山林。市は1998年、1人の地権者から約3億6000万円で公社に先行取得させた。ホッケー場を中心とした体育施設を整備する計画だったとされる。しかし、傾斜地であることや道路に面していなことに加え、大和青垣国定公園内にあって開発そのものにも問題があることから、計画は進まなかった。 2011年3月、市が設けた第三者委員会、市土地開発公社経営検討委員会が公社の塩漬け土地についてまとめた報告書によると、市の火葬場計画に対する沿道住民説得への協力と引き換えに、同土地を買い取るよう持ち掛けた人物がいたことが、当時の関係職員への聞き取り調査から分かったという。市が最近、明らかにした土地の簡易実勢価格は約470万円で、報告書は、事業化が難しく必要性のない土地を、作為的に高く設定された価格で購入した可能性があると指摘している。 市議が現在も保有している複写とみられる施設配置図は用紙1枚。題は「地域間交流施設(多目的人工芝グランド)配置図」(案)となっていて、1996年8月15日の日付がある。グラウンドのほか、コミュニティーセンターや管理棟、駐車場など施設の大まかな配置が記されている。見た目はメモ程度の簡単なもの。市議によると、議長名で市に資料請求して入手したという。 記者は市議の説明を根拠に、現在、同事業を所管している市スポーツ振興課に対し、同図の開示を求めるためその有無を確認した。同課は、図は存在せず、当時、存在していたかどうかも分からない、とした。市文書取扱規程は、「工事施工に関する文書」などの標準的保存期間を5年としている。市文書法制課によると、宙に浮いた事業を想定した文書の保存期間の規定はなく、所管課の判断次第という。 同土地は道路に面していないため、進入路を確保する必要がある。しかし、スポーツ振興課によると、そのための用地交渉が行われたことを示す記録は残っていないという。 同課は、事業の実体があったかどうかについて「公社に土地の先行取得を依頼した際の起案文書が残っているのみ。計画に関する当時の文書は全く残っておらず、存在したかどうかも分からない。口頭により引き継いだものもない。対応に苦慮している」とした。 公社解散に向け、保有していた21事業の土地は昨年12月、市に所有が移った。公社が土地を購入するためにした借金約173億円を市が肩代わりするのと引き換えに、土地で代物弁済を受けた。これらの土地の簡易実勢価格の合計額は約13億円にしかならず、市は公社に対する債権を放棄する議案をこの3月定例議会に提出している。 市土地開発公社経営検討委員会の報告書は、横井町の体育施設整備事業用地以外にも取得の経緯が不透明な土地が複数あることを指摘している。21事業の土地はほぼ全て大川靖則元市長の時代(1992年9月~2004年9月)に取得されている。 |
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