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奈良市議会議員提案 カラスへの給餌禁じる条例のパブコメ、被害具体的に示すべき〈視点〉奈良県の奈良市議会は、カラスなどへの給餌行為を禁止する条例の制定に向けてパブリックコメント(意見募集)を実施したが、きっかけとなった問題の被害について具体的に示すべきだった。問題は、市内の特定の人物の特異な行為により、特定の地域で発生しており、市民の大多数は現場を知らない。意見を求められても、条例の是非について判断が付きにくい。 「市良好な生活環境の確保に関する条例」は、市民が自ら所有しない動物に餌を与えることによって発生する鳴き声やふん尿などの被害から、周辺住民の生活環境を守ることが目的。違反者に対しては住所、氏名の公表の措置をとるほか、罰金を科す。議員提案による制定を目指しており、市議会会派の民主党奈良市議会が中心となり進めている。 パブリックコメントで示されたのは条例案とその解説のほかに、参考資料となる一問一答形式の「Q&A」だった。 このうち条例制定を目指すきっかけとなった問題については、「市内の一部地域において、2年ほど前から、特定の市民によるカラスへの給餌により、鳴き声、ふん尿その他の汚物などがひどく、良好で快適な生活環境が脅かされる事態が発生し、周辺住民の皆さんから改善の要請、ご意見をいただいてきました。しかしながら、現行の行政上の施策では法的根拠もなく、適切かつ有効な対応ができないところです」とするにとどまった。実際の被害や経緯の説明はなかった。 より具体的な資料がないか記者は市議会に開示請求をした。地元自治会が昨年8月、議長あてに提出した「請願書」が開示された。そこには被害状況として、鳴き声による精神的被害(朝4時30分ごろから夕方まで)▽家の屋根、洗濯物、自動車、道路などのふん尿その他の汚物▽アンテナ被害▽電柱、電線に多数のカラスが止まり恐怖感▽通学路を低空飛行することによる子どもたちの不安増大▽攻撃、威嚇行為による子どもの道路への飛び出しによる交通事故の危険性の増大▽餌を道路、家の屋根・庭などに落とす▽生ごみを荒らす▽ふんや餌による家のといの詰まり―といったことが列挙してあった。 経緯についても、「餌やりをやめさせるため、数回ご本人と自治会並びに市役所の方を交え、話し合いをしてきましたが、全然聞き入れていただけず」と触れていた。 人物や地域の特定を避けながら、被害を具体的に示せたのではないか。数字や写真で被害の程度を示す方法も考えられる。市議会に聞いた。副議長で民主党奈良市議会の山口誠議員や議会事務局は「特定の人、変わった人、その辺りをどう表現するか難しかった。具体的に知らせたいけど、人物や地域が特定されるとなると難しかった。地域が限定されると、自分には関係ないという意識になり支障もある。カラスは全般的にごみをあさっており、市民に理解してもらえると思った」とした。 山口議員によると、集まったカラスは多いときで40~50羽に上ったという。県迷惑防止条例を適応できないか、県警にも相談したという。パブリックコメントでしばしば不満に感じるのは、案に至る過程の検討資料が示されないこと。県が近鉄奈良駅前の行基広場に建設中のガラスの大屋根であれば、県は計画に当たって年間の雨天日数や観光客の動向を調べたが、パブリックコメントではそうした資料は示されなかった。国土交通省が奈良市の平城宮跡で進めている国営公園整備の計画であれば、同省は奈良文化財研究所の利用者アンケート調査の結果について検討したが、パブリックコメントではそうした資料は示されなかった。 住民が行政より乏しい情報で提出した意見は妥当といえるのか。行政がパブリックコメントを実施する上での課題ではないか。奈良市の同条例は市民全てに関わり、罰則も伴っている。 奈良市議会は当初、この3月定例会での条例制定を目指していたが、次回の6月定例会に見送った。飼い主のいない猫への管理された給餌行為、いわゆる地域猫活動に対する誤解を招くとして、県内の動物愛護団体から市議会に条例反対の署名が提出されたことや、パブリックコメントの結果にも同様の意見があったことから、動物をカラスに限定する条例に変更し、3月定例会の最終日に上程、委員会に審議を付託した。同様の条例は大阪府箕面市にもある。 |
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