心神喪失、心神耗弱の状態で他害行為に及んだ精神障害者に対し強制的な治療を行っている千葉県内の医療観察法・専用病棟を運営する医療機関が2012年度、運用上必要な外部評価会議を開いていなかったことが、記者が行った情報公開請求で分かった。会議は病棟運営の透明性を確保するなどの目的を掲げており、障害者の身柄を長期に拘束する病棟のモラルが問われそうだ。
外部評価会議を開催しなかったのは千葉市緑区田辺町の国立病院機構・下総精神医療センター。職員の話では、外部委員の識者らの日程調整がうまくいかず、開催を見送ったという。
同会議は法律の学識経験者や精神科医ら数人で構成。記者はこれまで地元の奈良県大和郡山市をはじめ、全国20カ所以上の専用病棟のある医療機関に対し、同会議の記録を開示請求してきた。
開示された文書によると、国のガイドラインが示している18カ月を越えた長期の入院が各地で行われていた。また、傷害などの事件発生から1年近くが経過した後に検察官が医療観察法医療の申し立てを行うという、精神鑑定の精度が疑わしい事例もあった。ある医療機関の会議の発言からは、事件当時に責任能力があった可能性が高く、本来なら入院対象にならない障害者が強制的に入院させられていた疑いのある事例も判明した。
下総精神医療センターの監督先に当たる厚生労働省精神・障害保健課の医療観察法医療体制整備推進室は「外部評価会議の開催については2005年、精神保健福祉課長名(当時)で関係機関に通知し、周知してきた。事実を確認の上、必要があれば関東信越厚生局が今年度の指導監査で指導する」と話している。
(厚生労働省精神・障害保健課の医療観察法医療体制整備推進室の談話は5月30日、従前の「担当者がおらず、あらためて説明する」から差し替えた)