奈良県)町家の芸術祭、案内印刷物に目立つ英語・カタカナ語 言葉の伝統はなぜ大切にされない
〈視点〉奈良県の業務委託を受けてこの11月に開かれた奈良・町家の芸術祭「はならぁと」(同実行委員会主催、県共催)の案内印刷物(無料配布)は、主要な所の記述に英語やカタカナ語(外来語)が目立った。日本の伝統的家屋の価値に注目した芸術祭でありながら、言葉の伝統はなぜ大切にされないのか、気になった。
「はならぁと」は「“町家”と“現代アート”との出会いによって、地域(まち)にとっても、アーティストにとっても、“新たな価値=魅力”を発見・創造していく取り組み」とされている。4年目を迎えたことしは「郡山城下町」会場など県内8カ所で開かれた。県は本年度、委託費として1480万円を支出した。
使われた英語やカタカナ語をざっと拾い上げると、開催地の案内地図や開催期間の案内などの見出しでは「AREA MAP」「TRAIN ROUTE MAP」「CALENDAR」など、趣旨を説明する文の見出しなどでは、日本語との併記で「はならぁととは About "HANARART"」「WHAT'S HIGHLIGHT OF "HANARART CORE"? “はならぁと こあ”の見どころとは?」「奈良県挨拶 Greeting」「Core & Plus “こあ”と“ぷらす”」などがあった。
文中ではセクション、メイン、エリア、サテライト、アーティストディレクター、アプローチ、Area、main、satelliteなど。また、各会場の展示の題名をそのまま記載したものだが、「メモリフラグメント」「Creator Creature Gathering Festival」「アーティストインレジデンス」「Consideration of Social Structure」などがあった。
このほか「現代アート」では一般的用語という、キュレーターやインスタレーション、ナイトビューイングなども。
必要ないか日本語で伝えられるものが多数あるように思われた。
実行委に聞いた。事務局は「ことしは若い人などさらに幅広い層に町並みの魅力をPRしたいと思い、デザインを一新した。来年度の開催に当たっては日本語を大切にする姿勢を大切にしたいというのが、指摘を受けての役員の一致した意見」とした。
印象度を高めるのに英語やカタカナ語は便利なのだろう。
国立国語研究所が「一般の人々にとって分かりにくい外来語が、公共性の高い媒体で無造作に使われ、人々の伝え合いに障害を引き起こしている」として、2003~06年に日本語への言い換え提案を発表するぐらいだから、英語やカタカナ語を多用した媒体が珍しいわけではない。
「はならぁと」は県が支援する大きな事業で影響力がある。先導的役目もあろう。町家の魅力を発掘するのと同様に、語る日本の言葉も見つけてほしい。