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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

県情報公開、不服申し立て審議1年以上先 件数増で処理長期化

奈良県運用の情報公開制度における不服申し立ての処理期間
(「奈良の声」調べ、議会は除く、不服申し立ての数は前年度からの繰り越し分を合わせたもの)
年度 開示請求の数 不服申し立ての数 答申の数 審査会の開催数 諮問から最初の審議までの平均期間 諮問から答申までの平均期間
2009 457 9 4 7 3.5カ月 5カ月
2010 531 7 4 4 2カ月 7カ月
2011 893 66 6 8 3カ月 7.6カ月
2012 770 91 17 10 5.5カ月 11.2カ月
2013 742 88 5 10 15.4カ月 19カ月
2014 737 97 4 9 10.5カ月 13.5カ月

 奈良県が運用する情報公開制度で、開示請求者が不開示決定などを受けて行う、不服申し立ての処理が長期化していることが、「奈良の声」の調べで分かった。県によると、不服申し立ての件数増が原因で、県情報公開審査会に諮問後、実際に審議が行われるのは1年以上先という。処理の迅速化が課題になっている。

 国や都道府県、市町村などの行政機関を相手に行政文書の開示請求を行い、それに対する決定が不開示や一部開示、文書不存在などで不服があるとき、請求者は行政不服審査法に基づいて不服申し立てができる。申し立てを受けた行政機関は、学識経験者などで構成される情報公開審査会に諮問、その答申を尊重して、再決定を行う。審査会は行政機関がそれぞれ設置する。

 県情報公開審査会は、南川諦弘・大阪学院大学大学院法務研究科教授を会長に、弁護士や大学教授、元新聞社記者など5人から成る。審査会の開催数は近年、年間10回ほど。県議会に対する開示請求に伴う不服申し立てについては、議会が独自に設けている審査会に諮問する。

 不服申し立てが増えたのは2011年度。県が公表している情報公開運用状況によると、09年度が9件、10年度が7件だったのに対し、11年度は66件に急増し、以降、12年度が91件、13年度が88件、14年度が97件。12年度以降、多数の前年度からの繰り越し分に新規の不服申し立てが加わり、このような常に多くの事案を抱える状態になっている。

 これに対し、同期間の答申の数は、公表されている答申によると、09、10年度がいずれも4件、11年度が6件、12年度が17件、13年度が5件、14年度が4件。12年度を除けば、年間の答申の数は5件前後にとどまる。不服申し立ての数に遠く及ばない。

 行政不服審査法は法律の目的に、簡易迅速な手続きによる国民の権利利益の救済を挙げている。県は県情報公開事務取扱要綱で、不服申し立てから諮問までの期間と答申から決定までの期間について、原則として各2週間以内と規定している。しかし、間の諮問から答申までの期間については規定がない。

 各答申について、諮問や審査会開催、答申の日付から処理に要した期間を計算した。諮問したものの最初の審査会審議に至るまでの期間が長期化していることが分かった。諮問から最初の審議までの期間は、09年度が平均3.5カ月、10年度が同2カ月、11年度が同3カ月、12年度が同5.5カ月、13年度が同15.4カ月、14年度が同10.5カ月。最小の10年度と最大の13年度の差は13.4カ月に上った。

 さらに、諮問から答申までの期間に範囲を広げると、09年度が平均5カ月、10年度が同7カ月、11年度が同7.6カ月、12年度が同11.2カ月、13年度が同19カ月、14年度が同13.5カ月で、審議に至るまでの期間の長期化の影響をそのまま受けていた。

 県総務課県政情報係によると、現在、不服申し立てをした場合、最初の審査会審議は諮問から1年ないし1年半先になる見通しという。答申に至っていない不服申し立てで最も古いものは7月22日現在、11年9月7日付の事案という。

桜井市は3カ月以内、決定までの期間を規定

 一方、県内市町村には、情報公開条例で期間を定め、努力義務を課しているところもある。桜井市は「裁決又は決定は、不服申立てを受理した日から起算して90日以内に行うよう努めるものとする」と定めている。山添村は、審査会は審査を求められた日の翌日から起算して90日以内に審査結果を報告するように努めなければならない、との規定がある。同村は、不服申し立てから諮問までの期間と答申から決定までの期間についても、県と同様に各2週間以内としている。

県「大量事案は一時的、争点整理や並行審議で対応」

 県総務課県政情報係は、不服申し立ての処理が長期化していることを認めた上で、「一時的に大量の事案が発生したことに起因するもので、審議の効率化を徹底することで対応したい。争点整理や並行審議を行うなど効率化を図っている」とした。同一人からの不服申し立てやよく似た不服申し立てを一緒に審議するなどしているという。

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