河合町3議員、沖縄石垣に津波対策視察 「町に海ないのに」 住民、費用30万円返還求め提訴
高桑さんが河合町議会への開示請求で得た沖縄県石垣市の視察研修報告書の複写。文書2枚(下)に現地で撮影した写真12枚(上)が添付されていた。
奈良県河合町議会の議員3人が2014年9月、議会の視察研修費を使って沖縄県石垣市の津波対策などを視察したことに対し、内陸の町に必要のない支出だったとして、町民が岡井康徳町長を相手取り、町が支出した同研修費30万円を議員3人に返還請求するよう求める住民訴訟を、9日までに奈良地裁に起こした。10月20日午後1時15分から第1回口頭弁論が行われる。
訴えたのは同町中山台1丁目の高桑次郎さん(75)。高桑さんはことし6月、同趣旨の住民監査請求を行ったが、却下された。
訴状などによると、町議会の議長を含む議員3人(いずれも無所属)は防災対策の視察を目的に、14年9月16日から2泊3日で石垣市を訪れた。議長あてに提出された報告書には、日付ごとに視察内容が簡単に個条書きされ、現地で撮影した写真などが添付されていた。
報告書によると、16日は同市防災危機管理室係長から、防災の日の条例制定やFM放送局との緊急情報に関する協定締結、流通業者との災害時の物資提供に関する協定締結、食料備蓄など、市の取り組みについて説明を受けた。17日は電柱の海抜表示や防波堤を視察したという。
議員には1人当たり10万円が支出された。内訳は、同町議会議員報酬条例に基づいて、定額支給の宿泊費2日分2万6600円、日当3日分9000円と交通費の実費。空路の交通費6万4620円を合わせた額は10万220円だった。町議会事務局によると、毎年度、議員1人当たり10万円の視察研修費が認められている。視察先は議員が希望を申し出て、議長が許可するという。
高桑さんは訴状で、「海のない河合町の議員が海抜表示や防波堤を視察する必要があるとはいえない。防災対策では近隣の王寺町で昭和57年8月の大和川氾濫水害の体験に基づく優れた水害対策を学ぶことができるので、遠く石垣市まで出張する必要はない」と主張している。
奈良の声の電話取材に対し、3議員の1人は「海があるとかないとか関係ない。防災の研修で行った。研修レポートを提出し、しかるべく処理している。議会事務局長も同行した。訴訟は意外、心外」と反論した。別の1人は「個人としては何も話すことはできない。議会事務局に任せている」と答えた。
北海道にも2年連続で
高桑さんが行った町議会への開示請求では、これより以前の視察研修の訪問先も分かった。2012年度は全13議員のうち9人が北海道を訪れ、栗山町の議会基本条例や千歳市を視察したという。13年度も7人が北海道を訪れ、夕張市の財政再建や札幌市の防災学習を視察したという。一方で、別に単独の1泊の視察で詳しい報告書を提出する議員もいたという。
高桑さんは「近隣町にいくらでも好例がある。2年続いて北海道へ行き、昨年度は沖縄である。あえて遠隔自治体を訪問する目的は何なのか」と疑問を呈し、「財政再建が重要課題である中、費用を最小限に抑える努力をすべきである」と訴えている。