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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

三宅町の水辺 ゆかりの万葉の花アサザが見ごろ 住民が普及活動

池一面のアサザの花。朝日を受けて一斉に開いた=2016年7月10日、三宅町伴堂の三宅健民運動場

池一面のアサザの花。朝日を受けて一斉に開いた=2016年7月10日、三宅町伴堂の三宅健民運動場

アサザが咲く池の手入れをする「屯倉歴史遺産を守る会」の山下幸太郎会長(左)と「あざさの花普及推進部会」の佐々木謙一部会長=2016年7月7日、三宅町伴堂の町役場前

アサザが咲く池の手入れをする「屯倉歴史遺産を守る会」の山下幸太郎会長(左)と「あざさの花普及推進部会」の佐々木謙一部会長=2016年7月7日、三宅町伴堂の町役場前

 奈良県三宅町の水辺で、町ゆかりの万葉の花とされるアサザが見ごろを迎えている。現在、自生のものは確認されていないが、2009年に町の花に認定されて以来、町や地元の住民団体の人たちが人工池などで育て続け、今年もかわいらしい黄色い花を付けた。

 三宅のアサザは、万葉集巻13の3295、3296の歌に「あざさ」の名で登場する。町の観光パンフレットの説明によると、三宅の地で愛する妻の下に通う男性の歌で、妻は髪にアサザを結い垂らした美しい娘という。町は「万葉の愛の花あざさ」が咲き誇る地と、三宅を宣伝している。

 アサザは、スイレンなどのように水上に花が咲く、ミツガシワ科の植物。5月から10月にかけ、直径3、4センチの花を付ける。朝日を受けて早朝に開花し、昼ごろにはしぼむ。特に6月から8月は花が多いという。

 「大切にしたい奈良県の野生動植物~奈良県版レッドデータブック」(2008年県発行)によると、かつては奈良盆地の池沼で普通に見られたが、現在では絶滅に近い状態で、自生を確認できないという。全国的にも開発や水質汚染で激減。本県では絶滅寸前種、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧に分類されている。

 同町で育てているアサザは町外から株分けしてもらったもので、育成は2010年の平城遷都1300年祭を機に開始。同年には町内全世帯に苗を配布した。現在、町役場前や三宅健民運動場、役場近くの万葉歌碑前など8カ所の人工池で育てている。盛時には池一面の花を楽しむことができる。

 町は普及のため、歴史散策などで訪れた団体や町外の希望する人に、苗を配布することもあるという。

 アサザの世話は、町民でつくる「屯倉(みやけ)歴史遺産を守る会」の「あざさの花普及推進部会」の18人が担っている。開花期間中は水やりや藻の除去など、日常的な手入れを欠かさない。

 普及推進部会はPRにも取り組んでいて、佐々木謙一部会長(45)は「花をデザインしたブローチを作って販売。昨年度は花をかたどったクッキーを作って販売した」と話した。守る会の山下幸太郎会長(74)も「軸や花が天ぷらや茶にならないか研究中」とした。

 同町のアサザに関する問い合わせは町企画課、電話0745(44)2001。

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