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発行者/奈良市・浅野善一
ジャーナリスト浅野詠子

市民グループが手作りの財政白書 わがまちの未来みんなで考える材料を満載 大阪府守口市

守口市民財政白書

守口市民財政白書

白書作りのメンバーらが守口市の魅力、可能性を語り合った昨年7月の座談会(同白書から)=「守口・財政を学ぶ会」提供<

白書作りのメンバーらが守口市の魅力、可能性を語り合った昨年7月の座談会(同白書から)=「守口・財政を学ぶ会」提供

 大阪府守口市の市民らでつくる「守口・財政を学ぶ会」が同市の財政事情を分析した「守口市民財政白書」(A4判、カラー64ページ)を発行した。税収の安定ぶりを誇った企業城下町は、なぜ財政が悪化したのか、数字を丹念に拾い集め、分かりやすく解説する。市町村の財政は、暮らしと密接につながるが、住民からは遠い存在だ。白書は、お役所の専門用語をなるべく使わないように努め、まちの未来を考え合う材料を満載している。

 元新聞記者の伊藤景子さん(58)が提案した。市民手作り財政白書の指導者として知られる研究者、大和田一紘さんの講座を開いてほしいと、守口市立中央公民館に掛け合い、昨年2月、実現。講座の終了を見計らい「みんなで白書を作りませんか」と会場で募ったところ、元会社員ら10人が手を挙げた。

 市民が財政白書を作る意義は何か。大和田さんによると、「自分の市町村の財政について、少し知った人が、知らない人に知らせようと一生懸命に作るので、分かりやすい白書ができる」といい、何でも知っている財政の専門家には書けない良い面が発揮されるようだ。「主権者がまちの財政を読めなければ、まちは変わらない」と大和田さん。

 伊藤さんが郷土の財政に関心を持つきっかけは、北海道夕張市の財政破たんを機に成立した財政健全化法の指導団体に、守口市も転落するとの予測報道が2007年ごろ、盛んに行なわれていたこと。これを回避しようと市は30億円を捻出し、実質収支の赤字を埋め、財政健全化団体に陥ることを免れた。捻出した金は、「基金の目的外の使用ではないのか」と白書は追及し、完済が2022年まで続いていく様を「ひっそり、ずるずる」という言葉を使い解説する。かつて市は家電メーカーの本社があるおかげで財政が潤ったが、リーマンショック以降、法人の失速ぶりは市の財政にも影響した。さらに、財政に余裕のあったころに建てた箱モノの借金返済で財政が悪化したと白書は語る。

 白書作りには、大手電機メーカーを定年退職した人や元証券会社社員、自治体の福祉事務所職員、情報公開活動をする主婦、香芝市議らが参加した。財政の指標を20年以上の時系列で追い掛け、グラフで図示した。また、似たような人口、産業構造を持つ他の市町村と比較した。これらは、目指すべき行財政改革について、市民が考える材料になる。

 現在の守口市は、税収の力を示す財政力指数が府内43市町村の中ぐらい。将来にわたる借金の重さを示す指標、将来負担比率の数値は良好で、2003年以降、市が公共事業を抑制したことによるという。

 一方、住民にほとんど知られていない国策的な借金、臨時財政対策債も特集した。発行額が増加しており、「本来、地方交付税として得られる収入ではないのか」と、当惑する市当局の声を載せている。国民健康保険料は大阪一高いと白書は指摘する一方、最近は子ども・子育て支援が大幅に拡充したとリポートする。

 つかんだ実態をよその市町村と比べ、メンバーが一喜一憂することもあった。それだけに固有の地域資源に目が向くようになる。二瀬川俊恵さん(74)は、家庭用たこ焼き器の製造が日本一の企業が市内にあることに着目し「中小企業を発掘、応援する施策を」と市に注文する。市を流れる一級河川、淀川にもメンバーは愛着を持ち、わんどやアシ原が広がる河川敷の親しみやすい一面を写真で紹介している。

 大和田さんによると、市民による財政白書作りは約20年前、東京都の多摩地区で始まり、全国45市町村で実践例がある。

 うち近畿では、市民団体「なら未来」が作った奈良市の財政白書、奈良教育大学の非営利組織論実習で学生が試みた同市の財政白書、高槻市民が取り組んだ同市の財政白書がある。守口市民の白書が4例目となり、市民に読んでもらおうとする工夫が随所に現れている。

 地方財政の研究者で大阪府高槻市民の初村尤而さんも守口市の財政白書作りに参加し、白書の後書きを書いた。人々の集まる公共施設を減らすと、市民の自発的活動を弱めると警告する一方、守口市は交通の便がよく、自転車で楽に移動でき、店も多く、コンパクトシティーと位置づける。「次の世代にふさわしい条件をそろえたまち」と結論づけた。

 1冊500円。送料・振込手数料は申込者の負担。問い合わせは「守口・財政を学ぶ会」、メールアドレスpek3588@gmail.com

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