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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

記者余話)奈良市の「重症警報」 県による借金誘導も一因

平城京朱雀大路跡の工場移転に絡む県、奈良市、事業者による覚書。宙に浮き、用地を先行取得した市の借金が急増した

平城京朱雀大路跡の工場移転に絡む県、奈良市、事業者による覚書。宙に浮き、用地を先行取得した市の借金が急増した

 悪化した奈良市の財政状況に対し県は昨年11月、「重症警報」を発令した。同市は、若い世代に影響を及ぼす借金の度合いを示す将来負担比率が高い。市の借金が増えた原因をたどると、県自らが誘導した施策が引き金となったものが複数ある。

 同市の財政悪化の原因として、利用目的が不明朗な土地取得に伴う巨額の借入金があるが、最大級のものは奈良市中ノ川町の山林(簿価約81億円)。もともと、平城京朱雀大路跡(国史跡)で操業していた工場の移転用地として、市が用地買収するよう県が誘導していた。県、市、事業者の3者は1983年9月、工場移転の覚書を交わしたが、計画は進まず、奈良市には土地購入の借金だけが残った。

 覚書の締結から14年後の1997年、県、市、事業者は再び「工場の移転用地は奈良市中ノ川町712番地外」と明記した確認書を取り交わしたが、2000年、計画は中止になった。市が先行取得した山林は遊休地と化した。ごみの不法投棄の格好の場所となり荒廃している。

 市の包括外部監査人は当時、これを問題視、「事業前にリスクの分担がなされていなかった」と県にも責任があったことを指摘した。

 これだけではない。「重症警報」発令の不名誉を被った5市町の借金苦を振り返ると、県が誘導した施策がぞろぞろ出てくる。市町村は2005年度まで、県の許可がなければ地方債を発行できなかった。

 公営文化ホールの建設ラッシュを招いた地域総合整備事業債(2002年廃止)。「いずれ借金の一部を交付税で戻す」と、国が奨励し、活用を県は市町村に勧めていた。略して「地総債」と呼ばれ、元県職員の話では「地総債を奨励するパンフレットまで用意していた」。これに乗っかった代表的な事例が、300億円近くをかけて奈良市が1998年に建設した市なら100年会館である。同時期に北葛城郡などにおいて、雨後のタケノコのように町営のデラックスなホールが着工している。

 次いで、2000年に入り平成の合併を誘導した合併特例債の発行も県が後押し、市町村の公債費比率を押し上げていく。「重症警報」を出された5市町のうち、奈良、宇陀、五條の3市のいずれも新市として厳しい船出をした。

 その次に県が奨励した借金は、2009年度以降の第三セクター等改革推進債である。県が「重症警報」を発令した5市町のうち奈良市、平群町、河合町が同推進債を発行し、土地開発公社を解散した。

 自ら勧めた借金のことには触れず、解散を財政悪化の原因として挙げるのはおかしい。3市町は、第3セクター等改革推進債を発行することにより、塩漬け状態の不良資産を抱え込んで借入の利息が膨らむことを避けた。返済期間を圧縮し、推進債を発行した方が、一時的に公債費比率が高くなっても将来世代の負担は軽くなるという選択だった。

 公社を解散することに問題があるのではない。放置されてきたおびただしい遊休地は、誰が持ち掛け、何のために買収したのか、市町村は調査を怠り、住民は今も何も理由が分からないところに問題がある。

 奈良県内市町村の借金の多さは少しも褒められないが、県にも責任の一端はある。それは棚上げし、上から見下ろすごとく「重症警報」などとうそぶいてよいかどうか。

 県市町村振興課は「重症警報という表現は適切であり、これからも財政健全化に向けて市町村と一緒に勉強していきたい」と話す。

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