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ジャーナリスト浅野詠子

記者余話)奈良県域水道一体化 御所市立図書館入り口の広報展示で考えた

「水道事業の広域化に向けて取り組んでいます」と広報する展示=2023年6月14日、御所市立図書館入り口

「水道事業の広域化に向けて取り組んでいます」と広報する展示=2023年6月14日、御所市立図書館入り口

 奈良県と県内26市町村が進める県域水道一体化の協議を巡り、安全・安心な水道水を持続的に供給することが可能とする見通しが、御所市立図書館の入り口前に展示されている。

 市が設置したもので、展示は約1.5メートル四方。県域水道が一体化されると、水道施設の若返りを着実に推進でき、市町村の区域を越えた施設・設備の最適化、人的資源の有効活用が可能とする。安全性が向上し、緊急時はこれまで以上に迅速な対応が可能とPR。

 展示板前の床にはメダカの水槽が置かれ「御所の水で育ったメダカです」と紹介するが、底意が伝わりにくい。なぜなら御所市に送られてくる水の8割が吉野川(紀の川水系)のダムの水だ。一体化が実現すると、市営浄水場(水源・地下水)は廃止され、大滝ダム(国土交通省、川上村)を主水源とする県営御所浄水場からの受水が100%になる。

 図書館は公共施設の代表的な空間。展示期間も1年以上の長期にわたるもよう。荒井正吾前知事の強力なリーダーシップで進んだ一体化により、赤字に苦しむ弱小水道が相当数、整理されることになる。図書館入り口前の展示には、御所市水道が歩んできた苦難の自画像は一行も出てこない。

 展示は、隣市の葛城市や給水人口が県内最大の奈良市が一体化の協議から離脱したことにも触れていない。肯定的な意見だけを載せると、半ば政治的な展示になってしまうのでは。図書館は書籍を通じて多様な考え方に触れることのできる場所のはずである。

 同図書館は「本年1月、水道広域化に向けた広報紙での周知が行われ、市民の集まる場所で周知することになった。市の中心部にあり、文化ホールと図書館のあるアザレアホールで展示することが決まった。パネルを組むのに適切な場所として図書館の前を選んだ」と話す。

 西日本でも有数の先行事例となる奈良県の広域水道企業団は2025年度の事業開始を目指す。企業長は山下真・新知事が就任する予定。企業団の利益だけを追求するのでなく、単独経営を選択したところも、過疎地の簡易水道も、県内すべての水道が健全な経営ができるよう支援が期待される。展示にもう一工夫ほしい。

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