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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

探る)公務員の名刺、「自費」も多く 奈良県内の市、香芝は公費での用紙購入認めデザイン統一

筆者が取材時の名刺交換などで受け取った奈良県内各市職員の名刺

筆者が取材時の名刺交換などで受け取った奈良県内各市職員の名刺

 かつて新聞社に勤めていた筆者にとって名刺は会社が支給するものだった。一方、公務員の名刺は自費という考え方の自治体も多い。「奈良の声」が奈良県と県内全12市に自費か公費かを尋ねたところ、そうした傾向があった。ただ、香芝市では公費とすることを全庁への通知で明確にし、各部署に名刺用紙の購入を認めるとともに、ばらばらだったデザインの統一を図っていることも分かった。

 名刺はかつては印刷業者に発注するのが主流だったが、現在はパソコンとプリンターがあれば市販の専用用紙を使って簡単に印刷できる。

 取材のきっかけは、10月10日の奈良市長定例会見での仲川げん市長の次の言葉。「公務員の名刺は自費。デザインもばらばら」。市長はこの日、ふるさと納税の市外流出を食い止めるため、市の返礼品を紹介する特設サイトの一新(10月13日付)など強化策を発表した。その一環として、公費で全職員にふるさと納税のPRが入った統一デザインの名刺を配布すると明らかにした。

 同市納税課によると、名刺は10月中に全職員2200~2300人に10枚ずつ配布の予定。名刺の裏にふるさと納税のPR をあらかじめ印刷した用紙を配布するとともに、デザインのひな型のデータを利用できるようにする。各自で所属課名や氏名を入力して、職場のプリンターで印刷してもらう。名刺の表では世界遺産「古都奈良の文化財」登録25周年もPRする。名刺のデザインは業者に発注した。2種類あるという。

 県と県内各市に職員の名刺は自費か公費か電話で尋ねた。全庁的に名刺を管理している部署がない場合がほとんどで、どちらであるか明確に線を引くのは難しかった。

 そうした事情の中で「奈良の声」が「自費」の仲間に入れたのは大和郡山、橿原、桜井、五條、御所、生駒、宇陀の各市。

 なぜ自費か。大和郡山市人事課は「よく言われるのは、名刺はいつでも使える。自己紹介でも使える。業務との線引きが難しい」と述べた。橿原市総務課は「個人で使うものだから税金ではできない」と述べた。

 桜井市人事課は「公費の支出はない」と述べ、職員の互助会売店で市のマスコットキャラクターをデザインした名刺を販売しているとした。五條市秘書広報課は「全庁的に示されている決まりはないが、自費で作っている」と述べた。御所市人事課は、各職員が印刷業者に依頼しているとした。生駒市人事課、宇陀市人事課も「自費」とした。

 自費だとデザインもさまざまで、筆者が以前に受け取った生駒市の名刺を例にとると、民間企業のようなデザインを凝らしたものや、和紙風の紙の材質にこだわったものがあった。

 一方、県と奈良、大和高田、天理、香芝、葛城の各市では、名刺用紙の購入や印刷費用に公費を充てることが容認されていた。

 中でも香芝市は2020年3月、全庁への通知文書「名刺デザインの統一について」で、公費とすることを明確にした。名刺用紙の購入やプリンターでの印刷費用について、各課の消耗品費として支出することを認めるとともに、市章や課名など必須の記載事項を示した。5つほどデザインのひな型も提案した。

 同市人事課によると、それまでも課の消耗品費で用紙を購入しているところもあったが、自分で印刷業者に発注したり、自宅のプリンターで印刷している職員もいて、デザインもばらばらだったという。

 このほかの自治体ではこうした統一的な決まりはなかったが、県行政・人材マネジメント課によると、県では県庁で使用する事務用品を扱う用品センターに名刺用紙が用意されているという。大和高田市財政課は「業者との交渉や他市町村との会議など業務上必要な場合には、各課の事務用品などの需用費の範囲の中で、名刺用紙購入の支出は認められる」とした。

 今回、統一デザインの名刺を配布する奈良市でも「部署によっては以前から消耗品として用紙を購入しているケースもあるだろう」(人事課)と述べた。天理市人事課は「名札に使う用紙で名刺を印刷している。デザインも3パターンを用意している」と述べた。葛城市人事課は「用紙を消耗品として職場で買っているケースが多いだろう」と述べた。

 自費か公費か。現在は自費とする大和郡山市でも、業務で使うのだから公費でという観点から「市役所内でも議論があるが、(検討は)優先順位で後回しになる」(人事課)と述べた。取材した市の職員の一人は個人の意見として「業務上必要なものは公費でいいのではないか」と述べた。

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