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ジャーナリスト浅野詠子

浄水場の廃止時期巡り綱引き 奈良県水道一体化で県と生駒・天理2市

天理市の杣之内浄水場=2020年11月、同市杣之内町

天理市の杣之内浄水場=2020年11月、同市杣之内町

 奈良県域水道一体化を協議している県広域水道企業団設立準備協議会(会長・山下真知事)で、県が生駒市の山崎浄水場(水源・地下水)と天理市の杣之内浄水場(同)の廃止時期について、いずれも「2048年度」と示したところ、両市が反対し、従来通り「2048年度以降」とするよう主張、県が方針を撤回していたことが分かった。

 橿原市が「奈良の声」記者に開示した2023年12月12日の同協議会施設整備作業部会の議事要旨に記録されている。

 山崎浄水場は2011年に、杣之内浄水場は2020年にそれぞれ改修されており、耐用年数が延びている。

 同部会の議事要旨によると、県が主要浄水場の統廃合一覧表を示した際、天理市の担当者が「杣之内浄水場は2048年度以降の廃止と認識しており、これまでの資料でもそうなっているが、この表では2048年度に廃止と言い切られている。これはどういうことか」と尋ねた。

 これに対し県水道局一体化準備室は「できるだけ明確にしておきたく『以降』を削除した」と説明した。

 この後、生駒市の担当者が意見を求められ「2048年度に廃止するとなると認識が変わってくるので、元の記載の方が良い。廃止するかもどうかも分からない」と発言した。

 「奈良の声」は両市の担当者に電話取材した。天理市上下水道局は「以降という文字が入らないと、市議会に対し説明してきた内容と異なってくる。県と対立しているのではなく、認識の違いを確認し、話し合うことにも部会の意義はある」と話す。

 生駒市上下水道部は「最初は県による誤記かと思った。指摘を受けて配布資料は修正されたものと認識している。24年先の水道事情を正確に見通すことは困難であり、実際に廃止されるかどうかも分からない」と話す。

 橿原市が記者に開示した記録には「以降」と記載されている。天理市によると、部会の事務局が修正したものが正規の公文書として保管され、開示されたのではないかという。

 12月28日に開かれた次の部会(リモート開催)で県が示した主要浄水場の集約化一覧は、一体化の準備に向けた県の最終的な意思に近いと見られる。これによると大和郡山市の北郡山浄水場(水源・地下水)は2026年度に廃止、桜井市の外山浄水場(水源・初瀬ダムなど)はその翌年度に廃止、天理市の豊井浄水場(水源・天理ダム)は2039年年度に廃止などと明記された。

 大和郡山市議会では防災上、北郡山浄水場の存続を求める意見が出ており、一体化への参加・不参加を巡って賛否が拮抗している。

 県が主導してきた一体化構想。30年先の財政試算を示し、市町村が単独で水道事業を行うより、広域水道企業団に参加した方が料金面などで有利と説明してきた。一方、災害劇甚化の時代といわれる今日、30年先の水源の在り方については論議をしていない。

 中心的な水源となる川上村の大滝ダム(国道交通省、吉野川)は工事に50年間の歳月が費やされたが、歴代知事のうち山下知事が初めて、下流の堤防未整備に伴う洪水調節の課題に言及した。将来は、堆砂量増大に伴う地方水道の負担金問題が浮上すると予想されるが、一体化の論議には上っていない。

 また、県自ら多目的機能の充実をアピールして建設した大和川水系の県営初瀬ダム、県営天理ダムが一体化に伴い水道水源としての役割を終える予定だが、県民に説明していない。 関連記事へ

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