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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野詠子

「情報公開と分権を強化」 スウェーデン、活力の背景 元大使館勤務の須永氏が奈良で講演

スウェーデン社会の仕組みを生き生きと語る須永昌博さん

スウェーデン社会の仕組みを生き生きと語る須永昌博さん=1日、奈良市登大路町の国際奈良学セミナーハウス

 IT競争力の強さや教育への大きな投資で知られるスウェーデン社会の現状を学び、日本の未来を考え合う講演会(「ミツバチの羽音と地球の回転」上映実行委員会・奈良主催)が1日、奈良市登大路町の国際奈良学セミナーハウスで開かれ、元同国大使館科学技術部に30年間勤務した須永昌博さんが講演。人権と平等を重んじるスウェーデンの社会政策の根底には税金が大きな役割を果たし、活力の背景に「情報公開の徹底と自治体の権限強化がある」と力説した。

 講演会は、二酸化炭素を削減しつつ緩やかな経済成長を続け、質の高い福祉を実現しているスウェーデン社会に着目した奈良市民の堀田美恵子さん、井上雅由さんらが計画。同国の研究講座で100回の実績がある社団法人スウェーデン社会研究所所長の須永氏を講師に招き、県内各地から訪れた約50人が耳を傾けた。

 国民すべてに10けたの個人認識番号をふることでも知られる同国。出生届は税務署に提出し、選挙の投票用紙も税務署が交付する。税の源となる個人の所得は個人情報に該当せず、「脱税が一番悪い犯罪」と須永さん。労働組合の組織率は90%を超え、男女均等社会を実現したが、税を生み出す産業政策や研究開発の水準は世界でも有数という。協同組合とスポーツクラブの数が非常に多いこともスウェーデン社会の特徴のようだ。

 地方分権を進め、教育と高齢者介護は市町村、医療は県が担うなど役割分担を明確化。持続可能な再生エネルギーの推進に力を入れており、バイオマス発電も先進地だ。須永さんは「国民の人口が少ないからできるのだという声をよく聞くが、論理的でない意見」とし、「スウェーデンの優れた政策は、絶え間ない法律化のメカニズムにより、国会議員390人の熱心な論戦と高い投票率、そして徹底した情報公開がもたらしたもの」と解説。その上で「日本は、重要な政策の多くを閣議決定という密室のやり方で決定してきた。低すぎる投票率にも問題がある」と批判した。

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