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発行者/奈良市・浅野善一
浅野詠子

文書保有するのに丸投げ 土地開発公社の開示請求で奈良市

 【視点】奈良市が保有する土地開発公社の関連文書をめぐり、記者が先月26日、市の情報公開条例に基づく開示請求をしたところ、市は保有文書の存在を確かめないまま、同公社に対応を委ねていたことが分かった。単純なミスであり、記者の指摘で市は撤回した。同市の外郭団体は、公開文書の範囲がかなり狭い上、情報公開条例の実施機関ではないので、不開示決定に対する不服申し立てなどの権利を住民が行使することは難しい。安易な丸投げは情報公開制度の後退につながる恐れがある。

 土地開発公社は、市の財政を悪化させている特別法人。本来は、情報公開条例の実施機関にして透明性を高める必要があり、そうなれば今回のような複雑なことは起きない。県内で公社の実施機関化を実現したのは生駒市や三郷町などほんの一握りであり、全国の都道府県でもまだ3割程度だ。一方、公社は自治体の命令を受けて巨額な土地を購入しており、重要な文書は必ず自治体が保有している。従って、自治体の情報公開条例を活用すれば、公社の情報はかなり入手することが可能である。

 このような方法で記者が過去に得た情報は少なくない。今回請求した文書は、事業別の公有地明細表であり、これまで2008年、09年と2カ年度連続して請求し、いずれも市の行政経営課が開示していた。ところが情報公開の担当者が代われば元の木阿弥。先月、直近の10年3月末現在の明細表を求めたところ、開示請求書は機械的に土地開発公社の職員に渡されていた。対応した市広報公聴課は「実施機関が保有しているか否かの調査をしないまま、土地開発公社に対応を委ねたことは不適切な運用だった。今後は細心の注意を払って情報公開事務に当たりたい」と話す。

 土地開発公社という住民の最も目に付きにくい外郭団体が、奈良市の財政悪化の主だった要因になっていることは、深刻な事態である。市はその解決を重点施策として掲げているが、今回のやりとりを見る限り、庁内での共有化は、まだ途についたばかりなのであろう。

 まして、情報公開の窓口は、加工されていない行政の原情報に市民が近づいていく大切な職務を担い、住民参加とも深くかかわる業務だ。藤原・前市政は退陣する直前、情報公開課を廃し、既存の広報公聴課に公開係を編入した。その業務の縮小が、このたびの機械的な対応と関係がないと言えるだろうか。人員が減れば公開制度のきめ細やかな運用にもひびが入る。1つの課をなくしたことで、行革の成果と称賛されたのであろうが、情報公開制度はたった1人の住民でも公費の監視ができるかけがえのない制度だ。大切にすれば、市民本位の行革につながるはずである。

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