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発行者/奈良市・浅野善一
浅野善一

下町の非正規性、まちづくりのヒントに 日中の都市を例に奈良でシンポ

日中の都市の非正規性について報告する龍元教授ら

日中の都市の非正規性について報告する龍元教授(左から2人目)ら=8日、奈良市東寺林町の市ならまちセンター

 改められるべき対象と見られてきた都市の下町や裏町の混然とした姿がこれからのまちづくりのヒントになるというシンポジウム「非正規都市のまちづくり―中国武漢・京都ウトロ・奈良町を考える」(奈良まちづくりセンター主催)が8日、奈良市東寺林町の市ならまちセンターで開かれ、約40人が参加した。日中のまちづくりなどにかかわる4人が発表し、機能性・効率性優先の現代の画一的な都市計画に疑問を投げ掛けるなどした。

 都市での非正規性は土地の不法占拠や違法建築を指し、貧民街などがその例となる。

 中国の龍元・武漢大学都市設計学院教授は、武漢市の古い繁華街・漢正街の非正規性について報告。

 500年以上の歴史がある同地区は多くの自前建築の住宅によって独特の都市環境をつくってきた。違法な増築などがまちにあふれ再開発の対象とされるような地域だが、人間関係が密接で商業の中心地として活力を持ち、無秩序に見える家々も伝統的な町並みとして同市のランドマークになっている。龍教授はこうした価値に注目、「違法建築でも隣同士が相談する集団のルールはある」「非正規性のマイナスの中に政府の機能主義的な都市計画に対抗する一つの新しいライフスタイルを見いだすことができる」とまちの多様な発展につながることを力説した。

 奈良まちづくりセンターの黒田睦子副理事長は、古い町並みが残る奈良町の再生に取り組み、成果を得るまでの経緯について報告。「市民が奈良町の記憶を掘り起こし、宝を探し、市に博物館都市構想を提案。景観形成地区の指定につながった。町家を再生、活用し、生活観光の町が定着した。テーマパークでなく、住んで良い町として脚光を集めている」と評価した。

 「ウトロを守る会」の斎藤正樹さんは、戦時中の強制労働をきっかけに生まれた京都府宇治市の朝鮮人集落ウトロの現状について報告。

 同地区では京都飛行場建設のため集められた朝鮮人が作業員宿舎跡周辺にその後も住み続け、退去を求められてきた。上水道普及率47%、下水道普及率0%という劣悪な住環境にある。斎藤さんは「今、行政の力を借り、新しいまちづくりが始まっている。公営の集合住宅を望んでいるが、これに従来の住民のコミュニティーも生かしたい」とし、単に住宅供給だけではまちづくりとしては不十分であることを指摘した。

 朝日新聞吉野支局の神野武美記者は「日本でも非正規化が起きている」とし、新しい法規制の中では旧来の建物は既存不適格建築物として扱われることをなどを指摘した上で、制度外、経済外の都市的な関係の展開を展望として語った。

 質疑応答では、漢正街と奈良町に共通するものの一つとして、路地の多さを指摘する意見もあった。路地はコミュニティーの場として重要な役割を果たしていると評価された。

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