奈良県と国交省、07年の平城宮跡国営公園化検討それぞれに業務委託 同一業者が受注、報告書に記述の使い回し

2013年8月10日 浅野善一
平城宮跡の国営公園化を検討した国交省の報告書(左)と県の報告書。同一業者が受注し、記述も写真も全く同じになったページ

 2007年、奈良市の平城宮跡(特別史跡)の国営公園化検討業務を、奈良県と国土交通省がそれぞれ外部に委託した際、同一業者が受注し、検討結果をまとめた両報告書の間で記述などの使い回しがあったことが、「奈良の声」の調べで分かった。県の報告書では全体の4分の1がそれに該当した。県と国の共通課題の業務委託に二重行政の無駄はなかったか。

 受注したのは一般社団法人日本公園緑地協会(東京都千代田区)。 業者の選定にあたって、県は07年5月、同協会と財団法人都市緑化基金、財団法人日本造園修景協会の3社に見積書を提出させた。同協会が最も低い額を提示した。一方、国交省は同年11月、企画競争実施を公示。企画提案書を提出したのは同協会だけだった。

平城宮跡国営公園化検討業務・報告書 奈良県と国交省で記述が同一だった個所(いずれも日本公園緑地協会が受注)
奈良県の報告書 国交省の報告書 同一の程度
項目 ページ 項目 ページ
T 2 (1) 遺跡博物館構想の概要 17〜20 1 (3) 2) 特別史跡平城宮跡保存整備基本構想 T 11〜13 主要部分
(2) 整備の経緯 21 1) 平城宮跡整備の経緯 8〜10
用地取得の状況 22 (2) 2) 用地取得状況 6 ほぼ全て
遺構分布状況 23 (1) 3) 平城宮跡 4
発掘調査状況 24 (2) 2) 発掘調査状況 7
施設の復原状況 25 (3) 3) 施設の復原状況 14
3 (1) 立地条件 26〜40 3 (1) 1) 立地特性 V 1〜16
(2) 自然条件 2) 自然特性
(3) 社会特性 3) 社会特性
(4) 展示、便益施設等の施設整備状況 4) 宮跡内施設整備状況
(4) 利用者数 41〜43 4 (1) 平城宮跡の利用者数 W 1〜3
利用内容 (2) 利用内容
利用意向 44〜47 2 (2) 2) 利用意向調査 U 37〜45、47、55 主要部分
特徴的な利用の状況 48  5) 使用許可に関する調査 62〜65
6) 団体及び事業者ヒアリング調査
(5) 管理状況 49〜50 3 (1) 5) 管理状況 V 17〜18 全て
U 3 (1) 活用の方向性の検討 59 7 (1) 2) 理念 Z 2 主要部分
V 1 基本的考え方の方針 61 3) 基本方針 ほぼ全て
5 (1) 公園利用者数の予測 112〜119 5 (1) 公園利用者数の予測 X 1〜10
(2) 駐車場必要数の検討 (2) 1) 駐車場台数
全体に占める割合34/142ページ(約24%) 全体に占める割合47/351ページ(約13%)
協会の受注額995万4000円、業務委託の日07年5月 協会の受注額6000万円、業務委託の日07年12月

 同協会の受注額は県が995万4000円、国交省が6000万円で、合わせると約7000万円になった。業務の完了日はともに08年3月だった。

 県の「平城宮跡の国営公園化に向けての検討業務報告書」は142ページ、国交省の「史跡を活用した国営公園の整備検討業務報告書」は351ページ。県の報告書は公開されていないため、記者が開示請求した。国交省の報告書は同省のホームページで公開されている。

 業務の目的について、県の仕様書は「都市公園化に向けた諸条件等を整理し、都市公園化にあたっての基本的な整備内容等について検討」とし、国交省の仕様書は「特別史跡平城宮跡について、史跡およびその周辺の現況やこれまでの研究成果等を把握しつつ、国営公園としての整備方針を検討」とした。

 記述などの使い回しがあった個所は、平城宮跡がたどってきた経緯や立地、自然、それまでの整備状況、利用状況、利用者数予測などを述べた主に基礎資料的な部分。県の報告書では全142ページの約24%に当たる34ページ分が該当した。国交省の報告書では全351ページの約13%に当たる47ページ分が該当した。これらのページでは、記述や写真、図の全てか、または記述の主要部分や骨格が同一だった。

 整備の基本方針を述べた部分もほぼ同一だったが、宮跡を用途や機能ごとに区域分けするゾーニングを示した部分は必ずしも一致していなかった。このほかのページでは、県の報告書がゾーニングなど整備内容の検討や有識者へのヒアリングに紙幅を割いたのに対し、国交省の報告書は事業効果の測定に紙幅を割いた。

著作権はそれぞれ県、国交省に帰属

 報告書の著作権は業務委託した側にある。国交省は企画競争実施を公示したときの業務説明書で、著作権は同省に帰属すると明示。県も取材に対し、著作権は県に帰属すると答えた。

 県と国交省に次の点について聞いた。

 同一の記述は使い回しに当たらないか▽それは発注者である県と国交省それぞれの利益を損ねたことにならないか▽県と国交省の間に著作権侵害の問題が生じないか▽2件の業務が1度の手間で済んだとなると委託金額の妥当性に疑問が生じないか▽テーマが同一の業務委託は県と国交省の二重行政ではないか。

 県平城宮跡事業推進室は、記述の使い回しについて「調査対象が同じ平城宮跡なので、記述や図が同様の内容になったと考えられる。基礎条件など同様となる部分の記述をそろえることは問題ないと考える」としたが、報告書のとりまとめの際、国交省と文言などの調整を行ったかどうかについては「当時のそれを示す資料がないため不明」とした。

 委託金額については「委託内容に基づき調査、検討が行われており、問題ないと考える」とし、二重行政については「県の業務委託は、国営公園化を国に要望するに当たり、平城宮跡の基本条件を整理の上、整備イメージを作成するものであって、事業効果や管理、運営を踏まえた国営公園の整備方針などを検討していた国交省の業務委託の目的とは異なる」と否定した。

 一方、国交省公園緑地・景観課は、記述の使い回しについて「基本的には既存の資料の引用や事実関係を整理したものが同じであった。同じフィールドである限り、同じ材料が含まれることはあり得る」とした。

 二重行政については「奈良県の報告書は基礎条件や県内の史跡を把握し、整備イメージを書いている。国交省の報告書は国営公園化を前提に事業効果や運営に当たっての必要な事柄を、整備、管理する立場で整理している。当時、奈良県とは情報交換しながら進めてきたと想定される」と否定し、委託金額については「発注時の仕様書の内容を満たしているので安く済んでいるとは考えていない」とした。

 日本公園緑地協会にも聞いた。

 同協会公園緑地研究所調査研究部長は「奈良県から委託された業務では、国に対して国営公園化の推進をアピールすべく、基本条件から論理立てて国営公園化の可能性をとりまとめていった」とし、推測の域を出ないがとした上で「国交省から委託された業務では、奈良県の業務で得られた条件整理結果や整備イメージを引き継ぎつつ、整備内容を深め、さらには事業効果、事業計画等を盛り込みながら、閣議決定や都市計画決定に耐えられる報告書をとりまとめた」と説明、「指摘の個所については当然同一でしかるべきと判断している。逆に相違が生じないよ う、奈良県、国とも協議・連携しながら報告書をとりまとめている 」との考えを示した。

 同協会は1936年設立、67年に社団法人化した。1039の団体・個人の会員(ことし5月10日現在)から成り、最大の構成員は581の地方公共団体。

 平城宮跡をめぐっては、07年4月、整備推進を公約に掲げた荒井正吾氏が県知事に初当選、国営公園化への取り組み進めた。08年10月、国営公園化が閣議決定され、同年12月、国交省が国営平城宮跡歴史公園基本計画を発表。現在、同省の下で公園整備が進められている。

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