2013年11月24日 浅野善一

奈良県・京都府の3市町またがる平城相楽ニュータウン 街路樹剪定、隣り合う場所でも違い 景観の一体性欠く

平城相楽ニュータウンのイチョウ並木。手前左のまだ紅葉していない、ずんどうのイチョウが奈良市側。奥の自然な樹形のイチョウが京都府精華町側=2013年11月9日、奈良市神功4、5丁目付近から

 紅葉の季節になると、街路樹の落ち葉への苦情が増え、その剪定(せんてい)の在り方が論議になる。奈良、京都の2府県3市町にまたがる平城相楽ニュータウンはどうか。例えばイチョウ並木。同じ一本の通りでも、市町の境界を挟んで一方は自然な樹形が生かされているが、もう一方は枝が切り詰められてずんどう。ニュータウンに関係する自治体がそれぞれ、住民のさまざまな要望を反映させた結果、隣り合う場所でも剪定の仕方が違うことに。街路樹の景観が街全体としては一体性を欠くものになってしまっている。

 同ニュータウンは広さ612ヘクタール。日本住宅公団(現・都市再生機構)が開発した。国の事業認可は奈良市側の平城地区が1970年、京都府側の木津川市(当時は木津町)と精華町にまたがる相楽地区が1978年だった。

市町境界で樹形一変

 奈良市神功から精華町桜が丘、木津川市兜台に至る一本の通りにイチョウ並木が続いている。木は2車線道路の両側の歩道それぞれに数メートルおきに植えてあり、紅葉の季節には通りを黄色に染める。

 奇妙なのは、通りを移動していくと途中で突然、樹形が一変してしまうこと。沿道の住宅地の家並みは一体に見えるが、そこは奈良市と精華町の境界だ。樹形の異なる前後2本のイチョウの間に境界を示す標識が立っているので、それと分かる。

 精華町側のイチョウは滴型の自然な樹形で枝ぶりが良い。一方、奈良市側は枝に広がりがなく、幹の回りに葉が密生していて、ずんどうに近い。木は強い剪定が行われると、たくさんの葉を出そうとする。奈良市側の沿道の主婦は、精華町側と比較して「住民に不評」と不満そうに話す。

 通りは行政区域ごとに奈良市道、精華町道、木津川市道となっている。それぞれどのような剪定をしているのだろうか。

 精華町の剪定は年に1度。町建設課によると、個人の敷地に掛かっていたり、歩道や車道の通行の障害、照明や標識の障害になっていたりする枝を切るほか、上に伸びすぎないよう幹の先端を切るが、後は自然な状態を残すようにしている。木津川市の剪定は2、3年に1度。市管理課によると、丸坊主にはせず、樹形を維持しながら枝をすくという。

 奈良市の剪定は年に1度。市道路維持課によると、樹形を残すようにしているというが、見る限りで精華町などとは違う。同課は、木が大きくなれば剪定も必要で、植えてからどれくらいたっているかによって剪定の仕方は異なってくるともした。ニュータウン開発は奈良市側の方が8年早い。どの程度、枝を残すかは落ち葉対策を念頭に地元との協議で決まったものだという。

 精華町側の境界付近では、落ち葉の掃除は自治会がしているという。沿道のクリーニング店の女性は「落ち葉に対する苦情は聞いたことがない」とした。自営業の男性(70)は「イチョウ並木の紅葉はきれい。落ち葉は自然現象だから仕方がない」と、樹形を生かした剪定の仕方を受け入れているが、一方で街路樹一般について「落ち葉の掃除をさせられるなら、いらんという自治会もあるだろう」とした。

 町に苦情がないわけではない。町建設課によると、紅葉をある程度の期間楽しめるよう剪定の時期を決めるが、うまくいかず落ち葉が出てしまい、「おしかりを受けることもある」という。

脇の通りでは丸坊主

近鉄高の原駅前の大通りにあるケヤキ並木。自然な樹形が維持されていて、紅葉の季節には歩道は錦のトンネルになる=2013年11月17日、京都府木津川市兜台1丁目
近鉄高の原駅前の大通りと交差する通りのケヤキ並木。剪定されてほぼ丸坊主=2013年11月16日、木津川市兜台1丁目付近
近鉄高の原駅前の大通り、奈良市側のケヤキ並木。昨年までは丸坊主にされていたが、今年から樹形回復に向けて枝をすく剪定に切り替えられた=2013年11月16日、同市右京1丁目

 ニュータウンの玄関口となる近鉄高の原駅。駅前の東西の大通りのケヤキ並木はなかなか壮観だ。4車線道路の両側に広い歩道があって、それぞれに2列ずつ木が植えてある。紅葉の季節に並木の間を歩くと、錦のトンネルを抜けるよう。通りは木津川市道だが、南側はすぐに奈良市。

 木津川市管理課によると、剪定は3年に1度。枝をすいているというが、ここ数年は財政的な事情で行われていない。

 ただ、大通りを外れて、脇の細い通りに入ると様子は変わる。大通りに交差する南北の通りは、2車線道路の両側に歩道があり、それぞれに並木がある。大通りを挟んで北側は木津川市道、南側は奈良市道。剪定が終わった木津川市側のケヤキはほぼ丸坊主。幹に近い所で太い枝がばっさりと切られ、痛々しくも見える。

 市管理課によると、沿道の集合住宅住民の落ち葉への苦情に対応しているのだという。歩道が狭いため木が大きくなると支障があるともいう。奈良市側も同様の事情で毎年、丸坊主にされる。

 大通りは、西側で駅前のイオン高の原店に突き当たって南に折れると、奈良市道になる。ケヤキ並木は1列に減って続くが、一転して寂しい風景になる。剪定が終わった木は丸坊主とまではいかないが、たくさんの枝がすき取られて、すかすかという印象。それでも今年はまだ良い方だ。昨年までは全くの丸坊主にされていた。

 方針転換の理由は、仲川元庸市長が掲げる「街路樹が美しい町並みを実現」。仲川市長は今年7月、2期目を目指して挑んだ選挙選で公表した政策集「NARA NEXT4(ナラ・ネクスト・フォー)」に盛り込んでいた。

 市長の指示を受け、市道路維持課は今年から、街路樹の剪定を強いものから弱いものに切り替えられないか試行を始めた。枝が伸びても支障がない通りでは、枝をすくような剪定に切り替え、自然な樹形に近づけようという。地元の意向を前提に剪定の方針を決めてきた市にとって、新しい試み。

ずんぐりむっくり、ケヤキに見えず

奈良精華線の奈良市側、剪定前のケヤキの並木。これまでの強い剪定によって背が低く、葉が密生してずんぐりしている=2013年11月16日、同市押熊町付近
奈良精華線の京都府精華町側のケヤキ並木。伸び伸びとした自然な樹形になっている=2013年11月14日、同町桜が丘4丁目付近

 同じ一本の通りの並木の景観が行政区域の境界で一変するもう一つの例。ニュータウンの西端を奈良市と精華町にまたがって南北に走る奈良県道(京都府道)奈良精華線のケヤキ並木だ。同線は4車線道路で、奈良市側は両側の歩道のほか中央分離帯にも並木がある。

 精華町側のケヤキは自然な樹形が生かされ、扇を広げたように伸びやか。一方、奈良市側は強い剪定が行われていて、同じケヤキと思えないほど背が低くずんぐりむっくりしている。短い幹の上に葉が塊となって密生している。両市町の境界を示す道路上の標識を合図に、並木の樹形ががらりと変わるさまは、先のイチョウ並木同様やはり奇妙。

 精華町側の並木を管理している府山城南土木事務所管理室によると、沿道は人家がほとんどないため、自然景観に合った剪定を行っているという。交差点や信号の周辺、死角となる所など、必要最小限の剪定に留めているとする。

 一方、奈良市側の並木を管理している県奈良土木事務所工務課によると、奈良市側も当初はきれいな並木だったという。木が大きくなってたくさん葉を落とすようになり、住民からの苦情が増え、これに対応して強い剪定を繰り返したことで、ずんぐりした樹形になったとする。沿道は店舗が多い。

 しかし、今年から、樹形を回復させる剪定に切り替えるという。丸坊主にしてしまうのではなく、枝ぶりを見ながら良い枝を一部残す。奈良市と同様の試みだ。県は、奈良市内の街路樹のケヤキの樹形がいまひとつという意見を受けて、平城遷都1300年祭の前年の2009年から、大宮通り(国道369号)でこの剪定を試行していた。効果がみられるといい、これをモデルにして、県が管理する他の路線にも広げようとしている。

住民の理解得られるかが鍵

 街路樹にはやっかいものの側面がある。奈良市在住の樹木医(61)は「道路を造れば必ず街路樹を植えていた時代があった。今、県などは植えないことが基本姿勢になっている」とする。「落ち葉は仕方がない」とした精華町のイチョウ並木沿道の自営業男性も「街路樹がその道路にそもそも必要なのかどうかという点から検討すべき。その後、樹種の選定、剪定の在り方を考えるべき」と注文をつける。

 奈良市道路維持課は「市には街路樹の樹種の選定などについて計画がない。その時の流行で植えられてきた。どういう木を選ぶか、通りの広さに合っているかどうかなど、今後新たに植栽する上では検討課題」と認める。

 次のような例がある。平城相楽ニュータウンの東西の主要道路となる府道相楽台桜が丘線は、西側で駅前の大通りにつながる道路で、同様にケヤキ並木がある。府山城南土木事務所は、剪定の仕方について沿道の自治会などから毎年、年度初めに要望をもらい、それを参考に工程表を作って提示、自治会内で話し合ってもらった上で了解を得る、という手順を踏んでいる。

 4年ほど前、同事務所が落ち葉への苦情を受けて、ばっさりと切ったところ、今度は逆になぜ切ったのかという苦情が相次ぐ事態になったとのこと。これがきっかけになったよう。同事務所管理室は、真ん中あたりの意見で両者に納得してもらっているとする。

 落ち葉に対する苦情には「家の雨どいが詰まる」といったものもある。剪定の在り方に対する意見は、住民でも街路樹に直接、面しているのか、いないのか、市民でもそこに住んでいる人なのか、通過する人なのかで変わってくる。行政は「剪定しろ」「剪定するな」という両方の意見の「板挟み」(木津川市管理課)になる。県奈良土木事務所工務課は「これまでは苦情に押されてきたところがある」と顧みる。

 県や奈良市は、強い剪定をしてきた街路樹の樹形の回復に向けて試行を始めた。奈良市道路維持課が「地元から落ち葉に対する苦情が出てきたら、また検討し直さなければならない」というように、住民の理解を得られるかどうかが鍵。それには住民が街路樹の在り方について考えたり、参加したりする機会を提供することも必要だ。

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