2014年2月10日 浅野詠子

奈良県:取り壊し旧都跡村役場、世界遺産の第2バッファゾーンに位置

80年の風雪に耐えてきた旧都跡村役場。独特の趣がある=2014年2月10日、奈良市四条大路5丁目

 奈良市が取り壊しを決めた同市四条大路5丁目の近代和風建築、旧都跡村役場(市有財産)は、世界遺産「古都奈良の文化財」の第2バッファゾーンともいえる「歴史的環境調整区域」に位置していることが分かった。旧役場は唐招提寺の近隣にたたずむ昭和初期の貴重な建物で、昔の小学校を思わせる板塀の雰囲気などが、のどかな景観づくりに一役買っている。80年掛けて形成された風景を、なぜ簡単に壊してしまうのか。惜しむ声が出ている。

 「歴史的環境調整区域」は、世界遺産を重層的に守るため、「古都京都の文化財」に倣い設けられた。遺産を直接保護する「緩衝地帯」(バッファゾーン)に対し、第2バッファゾーンとも呼ばれるが、「古都奈良の文化財」はハーモニーゾーンの呼称を用いている。環境保全と都市開発の調和を図るための区域になっている。

 薬師寺や唐招提寺の東側が「歴史的環境調整区域」の一部で、旧都跡村役場は同区域内にある。市の景観計画は「歴史的環境調整区域」を重視し、2011年、同じ区域を「西の京歴史的景観形成重点地区」に指定した。「世界遺産との関係を十分に考慮した景観形成が求められる」としている。

 一方、市景観課は「景観計画は、これから建つ新築の建物をいかに周囲の景観と調和させるかという狙いがあり、古い建物を残そうという計画ではない」と話す。

 忘れられた近代遺産ともいえる旧都跡村役場の付近を歩いてみた。

 旧庁舎の南隣には雰囲気のある木造民家がたたずんでいる。旧議事堂の北隣は、火の見やぐら、瓦屋根の消防団建物などが連なっていた。こぢんまりとしてはいるが、風雪に耐えた落ち着きがあり、市内のどこにもない独特な空気が漂っている。

 建物は現在、庁舎が都跡公民館尼辻分館、議事堂は市都跡連絡所。職員によると、取り壊しの知らせを聞いて駆け付けた人は「小学校のときからなじんでいた建物です」と話していたという。

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