2014年4月12日 浅野善一

奈良県:奈良市、91年の中ノ川・土地取得 許可見込みない造成地、宅地と評価 鑑定への疑問増す

 奈良市の積水化学工業奈良工場の移転用地確保を目的に市が1990〜94年、同市中ノ川町などの山林を市土地開発公社に先行取得させた際、無許可の造成地を宅地と評価した不動産鑑定に疑問が生じている問題で、当時の都市計画法上、同造成地のような小規模な面積では住宅地開発の許可を得ること自体が不可能だったことが、「奈良の声」の調べで分かった。鑑定への疑問が増した。

 これまでの取材によると、問題の土地は広さ約1万平方メートル。一部がひな壇状に粗造成されていた。市は91年4月、公社に17億6420万円で取得させた。鑑定評価額は1平方メートル当たり17万2000円と高額だった。一方、同事業で取得した周辺の山林の鑑定評価はほとんどが宅地見込地で、1平方メートル当たり3万円前後だった。移転用地の鑑定はすべて、公社の委託で市内にある同一の不動産鑑定会社支社が実施した。

 移転用地周辺は都市計画法の市街化調整区域、宅地造成規制法の宅地造成工事規制区域に指定されている。造成の目的が宅地であれば、開発許可や宅地造成工事の許可が必要だが、市開発指導課へのこれまでの取材で、同土地はいずれの許可も受けていないことが分かっている。

 当時、市街化調整区域における住宅地開発は、都市計画法34条10号イと同政令31条により20ヘクタール以上でなければ認められなかった。また、例外として5ヘクタール以上20ヘクタール未満の範囲で、知事は別に面積を定めることができたが、1万平方メートル(1ヘクタール)の同土地ではいずれの要件も満たせなかったことが新たに分かった。

 同土地の造成が始まった時期について明確に示すものはないが、市開発指導課保有の1988年「都市計画法・宅地造成等規制法許可申請等区域図」の地形図は、同土地の部分に「宅地造成中」の表示をしている。区域図作成を請け負った業者が航空写真に写っていた地形の状態を見て書き記したものとみられ、遅くともこの年までに造成が始まっていたと考えられる。

 都市計画法は1969年に施行されたが、34条10号イは2006年の法改正で削除されるまで存在した。開発許可や宅地造成工事の許可は89年度まで奈良県の事務だったが、90年度から奈良市に委任された。

 同土地は造成が無許可であっただけでなく、その面積から住宅地開発の許可を得られる見込みもなかった。不動産鑑定が適正に行われたか疑問が増す。市土地開発公社経営検討委員会は11年に公表した報告書で「先に売却者が応じた売買価額が結論として存在し、鑑定評価額については、それを上回るような調整をしていた可能性も否定できず」と、市が評価額に関与した可能性を指摘している。

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