2014年6月8日 浅野善一

奈良県の未公表サイト、電子会議室 東アジアの未来議論するはずが識者の投稿2年でわずか11件

↑当時の電子会議室ナラコムのトップページ画面を印刷したもの(県の開示文書から。黒塗りは県による。個人に関する情報になるとした)
↑当時の電子会議室ナラコムの課題別のページ画面(同)
電子会議室ナラコムへの意見投稿数
会議室名 09年度 10年度 11年度
伝統を未来につなげる日本型医療の創生 開設 1件
East Asia バイオバンク構想 開設 0
国際放送による文化情報の共有 開設 10件
日中韓電子フォーラム 実施

 奈良県が日本と東アジアの未来を考えることを目的に開設したインターネットサイトが、未公表のまま短期間で廃止されていた問題で、ネット上で識者らに議論の場を提供し、その議論の内容を蓄積して「知」のアーカイブ(記録資料の保管所)を構築するとした同サイトの計画に対し、議論の場として設けられていた電子会議室への識者らからの意見の投稿が2010、11年度の2年間で11件しかなかったことが8日までに分かった。サイトの実態は計画にほど遠かったとみられる。

 記者が県の情報公開制度に基づいて開示を受けた文書などで判明した。

1700万、開設に投じるも

 サイトは08年度の基本設計を経て、09年度、ネット上に開設され、11年度まで運用された。県はこれらの業務の委託に08〜11年度で1769万円を投じている。

 サイトは、県の平城遷都1300年記念事業の一つ、弥勒プロジェクトの中の事業として取り組まれた。ポータルサイトの「NARASYS(ナラシス)ネットワーク・スタジオ」を入り口として、電子会議室「NARAcom(ナラコム)」と、検索機能を持つウィキペディア型のアーカイブ「NARApedia(ナラペディア)」にアクセスできる構成になっていた。

 計画では、有識者らで構成される「日本と東アジアの未来を考える委員会」を核に、大学や教育機関、研究者、芸術家などの幅広い人材をネットワーク化し、その横断的議論や交流の場としてナラコムが置かれ、そこでの議論の内容を編集してナラペディアに蓄積していくことになっていた。

 サイトの基本設計から運用まで業務は、県が日本総合研究所、松岡正剛事務所、編集工学研究所の3者の共同企業体(JV)に随意契約で委託した、08〜10年度の弥勒プロジェクト推進業務に含まれていた。11年度の運用は単独で編集工学研究所に委託していた。

4人が持論述べて終わり

 同JVなどが県に提出した「弥勒プロジェクト推進業務NARASYSネットワークスタジオ運用支援作業報告書」などによると、ナラコムの運用は10年2月ごろ始まった。翌3月、課題ごとの会議室が開設された。伝統を未来につなげる日本型医療の創生▽East Asia(イースト・アジア)バイオバンク構想▽国際放送による文化情報の共有―の三つで、各会議室ごとに登録された5人または7人が意見を投稿できるようになっていた。

 また、ナラコムを利用できるのはIDとパスワードを付与された人に限られていた。

 報告書の中の当時のナラコムのトップページ画面を印刷したものによると、「様々な視点で日本と東アジアの未来を考える会議室群」として三つの課題が一覧で表示されていたほか、「新しい発言のあった会議室」も一覧できるようになっていた。また、課題別のページ画面では、意見を書き込む枠のほか、課題の主旨を説明した文章があり、それまでにあった投稿も一覧できるようになっていたとみられる。

 報告書の「各会議室の発言一覧」などによると、三つのテーマに対し、10年度は5〜8月に4人から延べ11件の意見の投稿があった。内訳は「国際放送による―」が10件、「伝統を―」が1件で、「バイオバンク構想」はゼロだった。いずれも投稿者が持論を述べて終わっており、議論の整理や集約は行われていない。9月以降は投稿が途絶えている。11年度は委託業者から発言記録の提出がないため、利用実績がなかったとみられる。

 計画にあった議論内容のナラペディアへの蓄積については、実施に至らなかったことがこれまでの取材で分かっている。

 一方、「考える委員会」を核とした議論とは別に、1300年記念事業の一つとして10年7〜9月に実施された日中韓電子フォーラムがナラコムを利用、参加者が意見交換を行っている。

 県国際課は投稿がわずかだった理由や、11年度の利用実績がなかった理由について「今すぐには答えられない。当時の経緯を確かめ、あらためて回答する」としている。

 同サイトをめぐっては、ネット上にアップロードされていたものの、県がその存在やアドレスを公表していなかったため、一般の人がアクセスし、閲覧することが事実上、不可能だったことや、12年度以降は運用経費などの問題を理由に継続されなかったことが、これまでの取材で明らかになっている。ナラペディアでの公開を前提に、何千万円という費用を投じ、観光振興向けに制作されたデジタル素材「2010年の奈良」も、閲覧される機会がないまま眠っている。

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