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発行者/奈良市・浅野善一
浅野善一

奈良県)奈良少年刑務所が移転候補地の調査 開示文書で判明 明治のれんが建築どうなる

れんが造りの奈良少年刑務所の表門

奈良少年刑務所。明治のれんが造りの建物の老朽化で施設の移転候補地の調査が行われた。写真は表門=2014年12月26日、奈良市般若寺町

 明治のれんが造りの建物を現在も使用している奈良市般若寺町の奈良少年刑務所が、建物の老朽化などから移転候補地の調査を行っていたことが、記者が法務省矯正局大阪矯正管区に対し行った行政文書開示請求で開示された文書で分かった。同建物は近代化遺産として貴重とされ、保存運動を展開する市民団体も先ごろ誕生した。建て替えや移転の動きが注視されていた。移転なら跡地利用で建物が残されるのかどうか同省の判断が注目される。

 奈良少年刑務所建物は1908(明治41)年、奈良監獄として建てられた。明治時代、国が監獄施設の近代化を目指して建てた全国の「五大監獄」の一つ。現存しているのは同監獄だけという。洋風の重厚な造りが特徴で、奈良県教育委員会がことしまとめた県近代化遺産総合調査報告書は「日本の近代化の一側面を示す遺構として貴重」と評価している。

 大阪矯正管区が開示した文書は、ことし2月から3月にかけて作成された、いずれも「奈良少年刑務所施設移転候補地の調査結果について」と題する報告書3件。1件の報告書につき1カ所の候補地の調査結果となっていた。確認できたのは報告書の題や作成日のほか、「所在地」「敷地面積」「地権者」「調査内容・調査結果(20項目)」などの項目名のみ。具体的情報はすべて黒く塗りつぶされ非開示だったが、同少年刑務所の移転が検討され、候補地が3カ所あるとみられることは分かった。

 非開示の理由については、行政文書開示決定通知書は「法務省内部の検討、協議に関する情報であり、公にすると外部からの圧力や干渉により、率直な意見交換や意思決定の中立性が損なわれる恐れや移転候補地の住民の間に混乱を生じさせる恐れがあり、移転に関する事務の遂行に支障を及ぼす恐れがある」とした。

 記者はこのほか、建物の耐震性や耐震工事、建て替えについて検討した文書なども開示請求したが、保有していないとされた。

 奈良少年刑務所用度課は同刑務所建物について「築100年以上たち老朽化が進んでいる。施設としては収容者と職員を守る義務がある」としたが、移転候補地の調査結果や跡地利用については「何も決まっていないので答えられない」とした。

 同建物をめぐっては、ことし10月、市民団体「近代の名建築 奈良少年刑務所を宝に思う会」が発足した。地元の自治会代表者や市在住の作家、まちづくり団体関係者、建築の専門家らが呼び掛け人になり、会長には奈良監獄を設計した山下啓次郎の孫であるジャズピアニストの山下洋輔さんが就任した。現在、建物に文化財保護などの規制がないことから、「いつ取り壊しになってもおかしくない状態」として、重要文化財の指定を目指し、勉強会などの活動を始めている。

 「守る会」の呼び掛け人の一人、奈良市在住の作家寮美千子さんは「移転候補地の調査が行われているのに、具体的な情報を公開してもらえないのは残念だ。少年刑務所建物の存続を考えるとき、秘密裏にして市民から遠ざけてしまうのは問題。いざ移転というときに理解が深まらず、反対運動が起こったりして困難につながる。情報を広く市民と共有して、どう臨むべきか共に考えていく姿勢が欲しい」と訴える。

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