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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

プレミアム商品券の参加資格、境界上の集合施設で判断分かれる 県発行は奈良側店舗に、奈良市は京都側も

奈良市と京都府木津川市にまたがる「イオンモール高の原」

奈良市と京都府木津川市にまたがる「イオンモール高の原」。床に記された境界から向こうの京都側の店舗にもプレミアム商品券への参加を認めるかどうかで、奈良県と奈良市の判断が分かれた=2015年7月13日撮影

 国の地方創生交付金を活用して自治体が発行するプレミアム商品券の参加店資格について、奈良市と京都府木津川市の境界上にある集合型商業施設「イオンモール高の原」に対する判断が、奈良県と奈良市で分かれた。県発行の商品券は、県内消費の喚起という目的に沿って奈良側の店舗に参加を認めるとした。一方、奈良市発行の商品券は、市外でも一体の施設なら例外とし、京都側の店舗にも参加を認めた。

 県は、「せんとくんプレミアム商品券」(額面1万2000円、価格1万円、利用期間9月1日から来年2月7日)を36万冊発行する。県民に限定せず販売する。奈良市は、「ももいろいくジーカ子育て世帯応援プレミアム商品券」(額面1万2000円、価格7000~9000円〈子供の数で異なる〉、同7月17日~来年1月31日)と「奈良市ポイント付プレミアム商品券」(額面1万2000円、価格1万円、同10月1日~来年1月31日)を合わせて12万5000冊発行する。販売対象は市民。

 「イオンモール高の原」は奈良、木津川両市にまたがる新興住宅地の真ん中辺りにある。大規模小売店舗立地法の届け出先は、店舗部分がより多く属する京都府で、施設の所在地名は木津川市相楽台1丁目となっているが、敷地や建物の南側部分は奈良市右京1丁目に位置する。このため、施設内の店舗は2つの行政区域にまたがって並んでいる。

県は県内の消費喚起を重視、奈良市は市民の利用しやすさ考慮

 県はことし5月25日から参加店を募集。募集要項は参加資格について県内の店舗とした。県産業振興総合センターによると、同施設に対し奈良側にある店舗の参加は構わないと伝えたが、応募はなかったという。1つの施設の中で商品券を利用できたり、できなかったりすることによる混乱を避けるためともみられた。県がプレミアム商品券を発行するのは今回で4度目だが、これまでも同様の判断だった。県は、県内中小店舗の売り上げにつながる消費喚起を目指したいとする。

 奈良市は6月1日から参加店を募集。市商工労政課によると、同施設からの参加店は京都側を含め99店。全店舗の3分の2に上る。市の募集要項も、参加資格があるのは原則として市内の店舗だが、例外として「大型店舗などで、ひとつの建物が他市とまたがる場合は、利用者の利便性を考慮して、当該建物内に存する全ての店舗が参加資格を有するものとする」とした。

 奈良市は、生駒市鹿畑町のイオンモール奈良登美ケ丘についても、一部が同市中登美ケ丘6丁目にまたがっていることから、全ての店舗に参加資格があるとした。生駒市が発行する商品券も同施設について、奈良市と同様の対応をしている。

 税収面で見ると、施設の所在地名が木津川市であっても、個別の店舗は立地が奈良市側であれば、奈良市や県に法人市民税や法人県民税などの市税、県税を納める。一方で、商品券の発行が奈良市であっても、店舗の立地が木津川市側であればこれらの税収にはつながらない。また、消費税の一部は地方消費税として都道府県に配分されるが、その額を決める要素の一つに各都道府県の小売年間販売額がある。このため、県内店舗に売り上げがある方が有利。都道府県は半分を市町村に配分する。

 県産業振興総合センターは「しゃくし定規かもしれないが、商品券発行に当たり、県境にある施設をどう扱うか検討した上で方針を決めた」と話している。一方、奈良市商工労政課は「1つの施設で、商品券を使える店舗と使えない店舗があることを案内するのは難しい。全額国の交付金による事業でもある。また、消費税の一部は地方消費税交付金として市町村に戻ってくる」としている。

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