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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

家庭で治水、雨水貯留タンク購入の補助率引き上げ 奈良県大和郡山市、普及図る

市役所に展示されている雨水貯留タンクの実物=2024年4月19日、大和郡山市

市役所に展示されている雨水貯留タンクの実物=2024年4月19日、大和郡山市

 奈良県大和郡山市は流域治水の一環として、市民らを対象に実施している雨水貯留タンク購入助成の補助率を今年度から2分の1から3分の2に引き上げた。利用者増を図り、水害に強いまちづくりを進める。

 同市は2002年、県内の大和川流域の市町村の中で初めて雨水貯留タンクの購入助成に乗り出した。これまでに228人が制度を利用。22年間で貯水容量の合計は約53トンとなった。しかし、当時、好意的に取り上げたメディアもあったが、思うようには普及しなかった。そこで今回、補助率を引き上げるとともに、設置後の申請を認めるなど、手続きも簡素化した。補助金の上限額4万5000円

 タンクは建築物の雨といに接続して使用。容量は1基当たり100リットルから150リットル程度が一般的という。市民一人一人の貯留量は小さいがちりも積もれば山となり、雨水を一時的にためることで、河川に一度に流入する雨水の量を減らし、河川の氾濫を抑制する効果が期待できる。

 各家庭や事業所でためた雨水は、洗車や庭木の散水などに利用できる。気軽に治水対策に参加できる上、節水につながる。これまで流すに任せていた雨水を生かせる。

 市は市役所の1階にタンクの実物を置いて助成制度をアピール。参加を促すステッカーも作った。市建設課は「今後は大型商業施設などにもタンクの展示に協力してもらい、市民のタンク利用を促進できれば」と話す。

 古くは、中世の筒井城を洪水から守った請堤(順慶堤)で知られる大和郡山市。近年は郡山城の外堀と中堀、稗田環濠集落の環濠などを利用して洪水対策容量を増やすなど、地域資源を活用した治水に取り組む。

 奈良盆地の主要河川の一つである佐保川を巡っては、県が1980年代、上流の奈良市中ノ川町に治水ダムを計画したが、経済性などから断念したこともあった。

 現代は、環境への負荷が低い流域治水の推進に注目が集まる。大和郡山市内では大型商業施設の地下や駐車場も雨水をためる構造になっている。市の新庁舎地下駐車場にも雨水約400トンをためる機能を持たせている。

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