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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野詠子

内覧会で県民の立ち入り拒否 医療観察法・専用病棟が完成 大和郡山の国立精神科病院

 殺人や傷害などの重大事件を起こし、心神喪失や心神耗弱が理由で不起訴や無罪になった人を強制的に入院させる医療観察法の専用病棟が大和郡山市小泉町の独立行政法人国立病院機構・松籟荘病院(紙野晃人院長)に完成し、15日、内覧会が開かれた。行政や医療機関、地元住民などの180人が内部を見学したが、希望した県民数人が立ち入りを拒否され、門前払いに。国は、同病棟での手厚い専門医療や入院者の社会復帰の促進を掲げているが、精神障害者の人権上、厳しい批判は根強い。

 近畿初の本格的な専用病棟で33床。入院患者の受け入れは、近隣住民との正式な合意が行われる今月24日以降になる。内覧会の参加者は、金属探知機によるボディー・チェックの設備や急性期患者の保護室などを見学。看護師ら職員が強化ガラスの強度を試した結果について述べ、自傷行為を防止するための壁や床の柔軟な素材についても説明した。

 しかし内覧会の受け付け時刻直前の午後零時すぎ、見学を希望した県民数人が内覧会場となる病棟への立ち入りを同病院職員に拒否され、中に入ることができなかった。門前払いされた人の中には、障害者やその家族らもおり、事実上、排除されたような格好だ。これに対し紙野院長は「以前、専用病棟に反対するデモがこの病院内で行われたことがあり、今回の内覧会は、事前に案内を通知した人に限定した。希望する人にはあらためて見学会を開きたい。排除したと言われるとつらいものがある」と話した。

 同法がつくられた出発点には、池田小児童殺傷事件についての誤った解釈があるといわれるが、民主党などの反対を押し切って2003年に当時の自民党政権が成立させた。障害者の入院は、検察官の申し立てと地裁裁判官の合議による審判などで決まる。厚生労働省によると、すでに全国20カ所の医療機関で専用病棟が稼働し、法施行後の入院決定数は989件(本年3月1日現在)。近畿では、大阪府立精神医療センターで5床が運用されているが、松籟荘病院が最初の専用病棟になる。

 制度に疑問を寄せる精神科医や福祉関係者は少なくない。医療や福祉の不十分さが事件を招く要因の一つであるとの見方があり、重大犯罪のすべてに正式な裁判鑑定を求める声や、自治体の精神科救急医療や地域福祉の拡充こそが本筋との意見もある。厳重な警備の専用病棟に障害者を隔離するかたちでの治療が精神疾患への偏見を助長するとの批判は根強い。

 同法に強く反対した民主党が政権党になり、「医療観察法は廃案になる動きはあるのか」との取材に対し、厚労省医療観察法医療体制整備推進室は「聞いていない」と話している。

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