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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

仕組債の運用 知らなかった

元管理者の岡井・河合町長 奈良県市町村事務組合問題

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2012年7月21日 浅野善一

 奈良県市町村総合事務組合が退職手当基金の運用目的で買った仕組債が満期前の売却で元本割れし、20億円が消失した問題について、売却前の2005~09年の4年間、組合管理者を務めた岡井康徳・河合町長が20日、町役場で「奈良の声」の取材に応じた。

 岡井町長は「(取材を受けるまで)仕組債という言葉すら知らなかった」と述べた。仕組債には組合の年間財政規模を上回る68億が投じられていたが、組合事務局による基金運用の中身は組合のトップに認識されていなかった。岡井町長は、20億の元本割れも知らなかったとした。組合の巨額の損失が構成市町村の長の耳に届いていなかった。組合の基金運用や組織運営のあり方が問われる。

 同組合は、複数の市町村などが事務の一部を共同処理するために設ける一部事務組合。県内29市町村、21一部事務組合の職員の退職手当支給が主な事務で、管理者は県市長会長、県町村会長、県町村議会議長会長の互選。また、組合議会議員はこれらの会の理事らの互選で決まる。いずれも持ち回りのあて職といえる。

 組合の財政規模は年間40―60億円。このうち退職手当の財源は、市町村、組合が毎年支出する負担金。退職手当基金は、財源が不足したときに備えるため、負担金収入の余った分を積み立てていた。基金は2001年度末で161億円あり、この半分近くを仕組債に投じた。一方、翌02年度以降、毎年財源が不足し、基金を取り崩し続けた。2010、11年度は仕組債を売却せざるを得なくなり、大半の63億円分を手放した。仕組債は高い金利が期待できるとされるが、為替などの相場に左右される上、市場性が低く、満期前に売却すると大きく元本割れする恐れがあった。

 売却時の管理者は、10年度が岡井町長の後に就任した吉田誠克・大和高田市長、11年度がその後に就任した現職の小城利重・斑鳩町長。

 岡井町長には、負担金を支出する現在の立場から検証の必要性や責任問題についてどう考えるか、また、管理者在任当時、基金運用にどう対応していたか、などを聞いた。

 検証の必要性や責任問題については「そういう問題があったのかという気持ちが強い」と述べた上で、こちらから組合に事実関係の説明を求める考えはないとした。さらに「何か問題があれば現在の管理者を含め役員が検討するだろう」と見守る考えを示し、「現在の管理者の立場もある。管理者が答えた以上に(「奈良の声」の取材に対する小城町長のコメント)立ち入るのは良くない」と意見を控えた。

 ただ「今度、役員になることがあれば意見を言うかもしれない。私も管理者をやってきたから、組合から検証を求められれば入らねばならない」と協力する考えも示した。

 管理者在任当時の基金運用への対応については「残高の把握には努めていた」としたが、有価証券の選択やその利息の有無など運用方法や運用状況については把握していなかったとした。基金の残高をめぐっては、近い将来、基金がなくなるかもしれないとの組合事務局の説明に対し、「町村の財政は厳しく、基金の残高がある段階で負担金を上げる必要はない」との判断をしたという。しかし、「元本割れは頭になかった。勉強不足と言われればそうかもしれない」と述べた。

 売却された仕組債は満期が20―30年なのに対し、購入から10年ほどしかたっておらず、組合事務局はこれまでの取材で「持ちきりであればもっと運用益が上がっていたはず」と答えている

 基金の運用方法については、組合事務局から決裁や指示を求められることはなかったという。この点について「組合事務局の会計管理者の権限の範囲という認識で、事務局が運用していたということだろう」とした。また、組合議会議員、構成団体の市町村や一部事務組合も運用の中身について「分かっていなかったのではないか」と推測した。組合事務局はこれまでの取材で、基金の運用方法は事務局長、会計管理者(事務局次長が兼務)、運用担当の総務課長の3者で検討していたとしている。

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