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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

仕組債の導入、運用基準で範囲広げ可能に

02年に前身の退職手当組合 額、満期は制限せず

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2012年8月7日 浅野善一

 奈良県市町村総合事務組合(管理者、小城利重・斑鳩町長)が退職手当基金の運用目的で保有していた仕組債を満期前に売却し、元本割れにより20億円が消失した問題で、前身の県市町村職員退職手当組合が仕組債導入のため、内部規定となる「資金管理並びに運用基準」を作り、購入できる証券の範囲を広げていたことが、同組合への取材で分かった。基金は財源不足や急な支出に備えるのが目的だが、基準の中に仕組債の購入額や満期の長さを制限する規定は設けられなかった。

 県市町村総合事務組合は08年、県内の市町村、一部事務組合職員の退職手当支給事務を共同で行っていた県市町村職員退職手当組合が県市町村会館管理組合と県市町村非常勤職員公務災害補償組合を統合して発足した。

 退職手当の財源は、各市町村、各組合が毎年支出する負担金。退職手当基金は、財源が不足したときに備えるため、負担金収入の余った分を積み立てていた。仕組債は2000年に導入した。基金残高は当時、161億円に上り、このうち68億円を投じた。一方、02年度以降、毎年、退職手当の財源が不足し、基金を取り崩し続けた。10、11年度は満期保有目的だった仕組債も大半の63億円分を売却するなどせざるを得なくなった。

 運用基準が施行されたのは02年1月7日。同基準は購入できる有価証券の例として円貨建て外国債券(仕組債)を挙げ、購入に当たってはOECD(経済協力開発機構)加盟国が発行した債券で、格付け機関による格付けが一定の水準以上であることを条件とした。地方自治法は、地方公共団体の現金について「最も確実かつ有利な方法により保管しなければならない」と規定しており、元本保証が前提と解釈されている。組合もそれまでは、定期預金のほか国債や地方債などで基金を運用していた。

 組合事務局によると、当時はペイオフ解禁(金融機関破綻時に保護される預金の上限を1000万円とする)への対策として、いろいろな団体が現金の運用方法について検討していて、その一つとして仕組債が全国の市町村などでももてはやされていたという。基準の策定に当たっては、証券会社や銀行から他市町村の先例について紹介を受けるなどした。

 一方、債券の購入額や満期の長さについては、支払い準備金や流動性の確保に努めるよう規定はしたが、制限は設けなかった。実際、組合が仕組債の購入に投じた額は基金の半分近くに上り、満期は20―30年という期間の長い債券だった。金利は長期であるほど良くなる。

 組合事務局は「市町村の財政事情から退職手当負担金を引き上げられず、将来、基金が枯渇することは予想されていた。ただ、経済は右肩上がりで、当時の担当者はその後のリーマン・ショックなど考えていなかった。仕組債は当初、半年から3年くらいで早期償還(金融機関側からの解約で満期前に元本が償還される)を繰り返しており、長期保有になるとは予想していなかったのだろう。定期が金利1%の時代に仕組債は半年で3―4%の金利だった」とする。

 同組合は退職手当基金のほか、市町村会館管理基金でも多いときで9億円の仕組債を保有。また、組合が事務局業務を行っている県市町村振興協会基金でも多いときで11億円の仕組債を保有していた。

利息15億 導入当初からの総額、組合が明らかに

 県市町村総合事務組合は7日までに、退職手当基金で保有していた仕組債の2002年の導入当初からの売却損益は20億6290万円減で、一方、利息は15億8190万円だったことを明らかにした。同利息を加味した場合、元本に対する減少額は4億8100万円であると説明した。

 組合はこれまで、仕組債の利息は7億8541万円としていたが、これは2010、11年度に手放した仕組債に対する利息の額で、導入当初に早期償還となった仕組債の利息が別に7億9649万円あったという。

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